日中漁業協定
1997年締結・2000年発効の「漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定」では、自国の排他的経済水域は、相手国漁船に対して許可及び取り締まりを行うこととされたが、両国の主張が対立した「暫定措置水域」「中間水域」「北緯27度以南の水域」では、特別な取り決めがなされた。いずれの国の漁船も相手国の許可を得ることなく操業することができ、両国は自国の漁船を取り締まり、相手国の漁船・国民を取り締まらないものとされた。
(1)暫定措置水域(北緯27度以北、北緯30度40分以南の下図に示す両国の中間水域)
協定により、以下の点が定められた。
・いずれの国の漁船も相手国の許可を得ることなく操業することができ、 両国は自国の漁船を取り締まり、相手国の漁船・国民を取り締まらない。
・日中漁業共同委員会で適切な漁獲管理を行う
(2)中間水域(北緯30度40分以北、東経124度45分以東、東経127度30分以西の水域)
漁業協定とは別に、2000年2月の日中両国閣僚協議によって,「中間水域」を定め, 暫定措置水域と同様の制度の下におくこととされた。
(3)北緯27度以南の水域(緯27度以南の東シナ海の協定水域および東シナ海より南の東経125度30分以西の協定水域(中国の排他的経済水域を除く))
協定では例外水域とされた。
実際の運用については、小渕恵三外務大臣と徐敦信特命全権大使との往復書簡で「相手国民に対して、当該水域では漁業に関する自国の関連法令を適用しない」ものとされた。
尖閣諸島は、(3)の海域の中にある。このため日本が主張する尖閣周辺の排他的経済水域で中国船が漁をすることに対して、日本が取り締まることはない。
近年、200隻を超える中国漁船が、尖閣周辺の日本が主張する排他的経済水域で操業している。このため、一部右翼新聞などでは中国脅威論をあおるような論調もみられるが、中国漁船の操業は、日中間の取り決めに従ったものである。
尖閣周辺の日本が主張する領海内で操業していた中国漁船を海上保安庁が拿捕したことがある。日中漁業協定は、排他的経済水域に関する協定なので、領海には適用されないとの解釈により、日本の法令を適用した。
日中漁業協定水域図
注)黄色は日台漁業取り決め(公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の漁業秩序の構築に関する取り決め)で定められた海域。
参考資料:漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/A-H12-343.pdf
中国漁船
尖閣周辺の日本が主張する排他的経済水域内で、多数の中国漁船が操業することがある。2010年9月24日の朝日新聞デジタルによると、尖閣沖に出漁した中国船は、一度の漁でカワハギが40トン近くとれることもあり、中国では1キロ90円弱で売れるそうだ。築地市場のカワハギ平均価格は、キロ当たり1000円程度なので、それに比べるとずいぶん安いが、それでも1回の出漁で300万円以上ならば漁場としての魅力は大きい。
2015年ごろからは、多数の中国船や台湾船が北海道・三陸沖の太平洋公海でサンマ漁をしており、乱獲防止が課題になっている。
最終更新:2017.4
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