台湾出兵関連の条約
1871年(明治4年)に起こった牡丹社事件などを口実に、日本は明治7年5月に台湾に出兵した。
清国は日清修好条規違反との理由で日本に抗議したが、議論は平行線をたどった。
イギリスの調停で、互換条款が成立し、日本軍は台湾から撤退した。
日清両国の交渉では琉球の帰属について議論されなかったが、条約の中に「日本国の属民等」とあるので、
宮古島は日本に帰属すると、日本は解釈した。
しかし、清国の解釈は異なっていた。
牡丹社事件ののちに、小田県(現在の岡山県西部と広島県東部)の4人が台湾で略奪・暴行を受ける事件(小田県漂流民事件)が発生しており、台湾出兵の口実となっていた。
このため、清国は「日本国の属民」は小田県漂流民事件の被害者と解釈した。
結局、琉球の帰属について、この時は何も定められなかった。
条約締結の5年後、1879年3月、松田道之は軍隊・警察官600人余りを引き連れて首里城に入城し、琉球王府を接収し、琉球王を東京に居住させた。日本の処置に対して、清国は強く抗議した。
1880年3月、日本と清国の間で琉球問題を解決させるため、アメリカ前大統領グラントの斡旋で、日本政府は奄美・沖縄地区を日本領とし、宮古・八重山地区を清国領とする分割案を提案した(先島分割案)。
同年10月、日本側代表宍戸・井上毅と清国側諸大臣との間で先島分割案で妥協した。これに対して、琉球から清国へ亡命した者から先島分割案反対の嘆願が繰り返し出され、さらに林世功の抗議の自殺により清国政府は衝撃を受けて条約案は棚上げになった。
1894年(明治27年)7月25日、主に朝鮮半島をめぐり日本と清国の間で、日清戦争が勃発した。
戦争は翌年3月には日本の勝利に終わり、4月17日、下関条約が調印され、台湾が日本へ割譲されることとなった。この結果、日本と台湾の中間にある琉球が日本の領土であることに、 清国からの抗議はなくなった。
台湾出兵の後に成立した条約を示す。
互換条款
大日本全権辮理大臣参議兼内務卿 大久保
大清欽命総理各国事務 理藩院右侍郎成
工部尚書崇
戸部尚書董
軍機大臣協辮大学士吏部尚書宝
和碩恭親王
軍機大臣大学士官理工部事務文
吏部尚書毛
軍機大臣兵部尚書沈
頭品頂戴兵部左侍郎崇
三品頂戴通政使司副使夏
条款を会議し、互に辮法の文拠を立るを為めの事。照し得たり、各国人民応さに保護して害を受くるを致さざるべきの処有れば、応さに各国由り自ら法を設け保全を行うべし。何国に在りて事有るが如きは、応さに何国由り自ら査辮を行うべし。茲に台湾生番曾て日本国の属民等を将って妄りに害を加うる事を為すを以て、日本国の本意は、該番を是れ問うが為め、遂に兵を遣り彼に往き、該生番等に向い詰責をなせり。今清国と、兵を退き、並に後を善くする辮法を議明し、三条を後に開列す。
一、日本国、此次辮ずる処は、原と民を保つ義挙の為めに見を起す。清国指て以て不是と為さず。
二、前次、有る所の害に遇う難民の家は、清国定て撫恤の銀両を給すべし。日本有する所の該処に在て、道を修め房を建る等の件は、清国留めて自ら用ゆるを願い、先ず簿補を議定するを行い、銀両は別に議辮ずる拠有り。
三、有る所の此の事につき、両国一切来往の公文は彼此撤回して註銷し、永く為に論を罷む。該処の生番に至つては、清国自ら宜く法を設け、妥く約束を為すべし。以て永く航客を保ち、再び凶害を受けしむ能わざる事を期す。
明治七年十月日
大日本欽差全権大臣 柳原
同治十三年九月日
互換憑単
大日本全権辮理大臣参議兼内務卿 大久保
大清欽命総理各国事務 理藩院右侍郎成
工部尚書崇
戸部尚書董
軍機大臣協辮大学士吏部尚書宝
和碩恭親王
軍機大臣大学士官理工部事務文
吏部尚書毛
軍機大臣兵部尚書沈
頭品頂戴兵部左侍郎崇
三品頂戴通政使司副使夏
憑単を会議する為の事。台番の一事、現在業に英国威大臣と同に議明し並に本日互に辮法文拠を立つるを経たり。
日本国、従前害を被むる難民の家、清国先ず撫恤銀十万両を給す。又日本兵を退くや、台地に在て、有る所の道を修め、房を建つる等の件、清国留めて自ら用ゆる事を願い費銀四十万両を給す。亦た議定を経て、
日本国、明治七年十二月二十日、清国同治十三年十一月十二日に於て、
日本全く退兵を行うを、清国全数付給する事を准す。均く期を愆つを得ず。
日本国兵未だ全数退き尽すを経ざるの時は、清国銀両も亦た全数付給せず。此を立て拠と為し、彼此各一紙を執て存照す。
明治七年十月
出典
アジア歴史資料センター
台湾藩地処分の儀清国と訂約済
レファレンスコード C04017570600
注:旧字を新字に改め、カタカナをひらがなにし、適宜句読点を追加した。
竹内実・他/編『必読日中国交文献集』蒼蒼社
(2005/04) に記載されている「互換条款」「互換憑単」には、ルビが振ってあり読みやすい。
最終更新 2018.2
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