尖閣列島問題参考書
『尖閣衝突は沖縄返還に始まる 日米中三角関係の頂点としての尖閣』
矢吹晋/著 (2013/08) 花伝社
沖縄返還のとき、米国は尖閣を含めて日本に返還した。しかし、返還は施政権のみであって、領有権について米国は関知しないとの立場だ。米国は、なぜ、このような不可解な態度をとるのか、本書ではこの点を明らかにしている。
沖縄返還当時、世界の関心は、中国の国連代表権問題であり、米中関係だった。年表風に書くと、次のようになる。
1971/6/17 沖縄返還協定調印
1971/10/25 国連代表権が中華人民共和国に移る
1972/2/21 ニクソン訪中(米中共同宣言)
1972/5/15 沖縄返還協定発効
1972/9/29 日中共同声明(国交回復)
沖縄返還・日中国交回復・台湾断交も、このような世界政治の中で起こっていることに注意する必要がある。本書では、米国の尖閣領有権に対する中立的態度は、米・中・台の関係と、日米関係がどのように影響しているのかを、いろいろな資料に基づいて解明している。
しかし、読んでいて、どうも良く分からないのだが、当時の米国の態度や、当時の日本の外交交渉が、現在の尖閣問題の原因になっているといえるのだろうか。
確かに、当時、米国が、日本に領有権があるといってくれれば、あるいは、日本政府が、中国や台湾と完璧な外交交渉をして、日本に100%有利なように問題の解決をしていたら、現在に尖閣問題は起きなかったはずだ。しかし、政治には、その時々において優先課題があるもので、当時の日本政府にとっては、領土問題を100%解決することではなくて、沖縄返還が最重要課題だったので、尖閣問題は積み残したのだろう。