尖閣列島問題参考書
『尖閣諸島灯台物語』 殿岡昭郎/著 高木書房 (2010/06)
あまりお勧めする本ではない。
尖閣には、指定広域暴力団住吉会系右翼団体の灯台が建てられている。尖閣は埼玉県大宮市在住の栗原氏の所有だったので、栗原氏が、どのようないきさつで、指定広域暴力団住吉会に灯台建設を許可したのか、あるいは、やくざが無断で建てたのか、それが知りたくて本書を読んでみた。
この点に関して、明確な記述はないが、栗原氏は北小島の灯台建設を政府圧力で許可しなくなったような記述があるので、魚釣島の灯台は、栗原氏が建設許可をしているのだろう。この灯台は、その後、政府に移管されたのだから、土地所有者に無断で建てられたものとは考えにくい。しかし、栗原氏と指定広域暴力団住吉会との関係は、本書には全く記されていない。
尖閣に灯台を建設したのは、住吉会小林組会長・小林楠扶(楠男)が作った右翼団体の日本青年社。小林は、力道山刺殺(傷害致死)犯人の村田勝志・元受刑囚の親分。小林が縄張りの風俗店で用心棒をしていた村田は、客の力道山と口論となって、ナイフで刺したが、これがもとで、力道山は死亡した。村田は傷害致死で懲役7年となり、刑期を満了したようだ。
デヴィ夫人は、この風俗店で働いていたとき、スカルノのお気に入りとなったため、小林はデヴィ夫人をインドネシアに贈った。
本書は、尖閣灯台建設の話題のほかに、小林の生い立ちにも触れられている。この部分に限らず、本書では、暴力団の犯罪に寛大な記述となっている。特に、日本青年社会長の松尾和也が恐喝で逮捕された事件では、最高裁で有罪が確定しているにもかかわらず、犯罪者を擁護し、裁判に批判的な記述だ。著者は、公正な司法よりも、暴力団のほうが好きなのだろうか。松尾を始めとした日本青年社幹部が恐喝などの犯罪で逮捕・有罪判決は珍しいことではない。尖閣灯台建設に対しても、やくざ達の苦労話が主体で、興味が持てなかった。
やくざの出世物語や、苦労話が好きな人には、本書にも興味が持てるかもしれないが、そうでない人には、特に参考になる記述はないように感じる。本書は、文字が大きいので、ページ数の割には、内容が少ない。