琉球王国 東アジアのコーナーストーン 赤嶺守/著(2004/4/3) 講談社選書メチエ
グスクの時代から明治の琉球併合まで、琉球王国の歴史を時代をおって書かれた記述で、琉球の歴史を学習するために向いている。著者の専門のためか、琉球国内史は多くなく、琉球と周辺国との関係史、特に、明・清との関係史の記述が多い。
尖閣の領有権問題に関連して、尖閣の歴史を知ることは重要である。尖閣は、もともと中国・琉球の航路の標識として使われ、中国によって命名され、中国の文書に記載された島である。歴史学者で京都大学教授だった井上清はこの事実を指摘したが、これに対して、国士舘大学助教授の奥原敏雄は、中国から琉球に来た船よりも、琉球から中国にわたった船のほうが多いことを指摘したため、あたかも琉球のほうが尖閣をよく知っていたかのような誤った風説が、日本国内で流布している。
琉球から中国への航海に使用された船舶は、当初、明国より琉球に下賜されたもので、航海は久米村(現・那覇市久米)のビン人(ビンは門構えに虫と書く文字で、中国・福建省の人をビン人と言う)が中心となっていた。久米のビン人は、ごく初期を除いて琉球生まれであったが、明治になるまで、彼等は、琉球王国において中国人とみなされていた。
尖閣問題を考えるにあたって、中国・日本との単純な視点だけではなくて、琉球・中国交流史の視点が必要である。本書は、この目的のために、好適な教科書になるだろう。