石平/著 「尖閣問題。真実のすべて」(2012.12) 海竜社 

 
日本に帰化した中国人の著書。まったく、読むことを勧めない。

 

 本書は、日本に帰化した中国人による尖閣問題の解説本であるが、日本政府の説をそのまま焼きなおしているだけであり、主張に、新味がない。それどころか、日本語を母語としない人のためか、首をかしげる解説もある。日本政府の主張ならば、日本人による著書を読んだほうが、理解しやすくてよい。
 
 P22には『1885年、当時の日本政府は、沖縄を通じて入念に尖閣諸島に対する現地調査を行った』と書いている。『入念に』などと、単なる形容詞を使い、具体的にどのような調査を行ったのかを書いていないが、日本の官僚は、『何もしない』と言う代わりに、『善処する』と言うし、『しばらく放置する』と言う代わりに、『慎重に調査する』と言うものだ。こういう、日本の官僚用語を知っていて書いているのだろうか。外国人が、日本政治の常識への無知をさらけ出しているだけの本なのか。 
 
 P30では、中国の尖閣主張を批判して、『中国人より先に、琉球人が尖閣諸島の存在を知っていたほうがむしろ自然だろう』と書いているが、ここで言う琉球人とは、中国福建省出自で那覇市久米村に住んでいた人たちのことであることを、著者は知っているのだろうか。単に、日本史・琉球史知識の欠如から来る妄想なのか、不明だ。
 
 P34にも不思議な記述がある。『石井准教授によると、郭汝霖の上奏文の中の「渉る」という言葉は「入る」という意味』と書いているが、これは誤解ではないだろうか。『渉る』は水の上を渡るという意味であり、『入る』という意味ではない。石井氏が、郭汝霖の文章の『渉』を、前後関係から、『入』の意味に解釈したのであって、『渉』が『入』の意味だと石井氏が主張しているわけではないと思う。著者の書き方だと、まるで石井氏が言葉を知らない馬鹿者のようにも感じられるが、そんなことはないだろう。
 
 P60の次の記述もいただけない。
 『「釣魚島は中国の領土である」という自らの主張と、尖閣諸島が実際に日本の領土として日本の支配下に有るという事実の狭間で苦しんでいるのは中国のほうなのである。中国政府の直面する深刻なジレンマはまさにここから生じている。』
 著者は、日本の領土問題を知っているのだろうか。北方領土や竹島は、日本政府が実効支配をしていないので、日本政府は粘り強く交渉するとのスタンスであり、ジレンマなどではない。尖閣問題に対する中国も、実効支配していないという点では、同じことだ。著者は、日本の領土問題を、小学生程度でよいから、知っているのだろうか。


尖閣関連書籍のページへ   尖閣問題のページへ   北方領土問題のページへ   竹島問題のページへ