福州琉球館からみた琉球と中国の交流史



深澤秋人/著『近世琉球中国交流史の研究 居留地・組織体・海域』榕樹書林 (2011/09)
 

 日本の室町時代、琉球は明国と冊封関係を結び、明国を宗主国とする、藩属国になった。琉球王が交代するたびに、中国から冊封使がおとずれた。また琉球からは、数年に1回から年に数回、朝貢のための使節が中国を訪れた。琉球から中国を訪れる使節は、初期を除き、福州の琉球館に滞在した。琉球館は通称で、正式には「柔遠駅」と言う。 
 本書は、福州琉球館の様子、歴史、中国に渡った使節、中国文化を学習のために渡った人々など、琉球館からみた、琉球と中国の交流の歴史を明らかにしている。本書は、著者の学位論文を母体としているため、内容は専門的であって、一般読者の娯楽・教養のための本ではない。
 朝貢の使節は年に数回から数年に一回の割合だったので、それに伴い琉球館に滞在している人数は増減しているが、常時、なんらかの琉球在住者が滞在していた。また、現地の人も、警備員など以外にも、遊女・勝手に商売する人から、おもちゃが中に入った地元の子供など、多様な人が存在しており、琉球館の内外の垣根はだいぶ低かったようだ。
 琉球の使節員で、琉球館以外に滞在し、勝手に商売していた人や、親戚縁者を訪ねた人もいたのだろうか。


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