尖閣諸島と日中外交

   
塩田純/著『尖閣諸島と日中外交  証言・日中米「秘密交渉」の真相』 講談社 (2017/4)
  
 本書はNHKテレビ番組のための取材をもとにしたもので、著者はNHKプロデューサーのため、読みやすい。
 内容は、バンドン会議での日中接近から、日中国交回復までの日中関係史。尖閣諸島の領有権問題が本書のメインテーマというわけではない。
 バンドン会議の時は高碕達之助に焦点があてられる。
 沖縄返還の時、台湾・中国から尖閣諸島の要求があって、米国は領土問題に関知せずに施政権を日本に返還した。このころは、中国の国連代表権問題があって、政権の正統性と領土問題が密接に関係していた。本書では、このあたりの事情を読みやすく説明していて、事前知識なしに簡単に理解できる。尖閣問題を学習する場合は、本章だけでも読んでおいたほうが良いように思う。
 本の半分は、日中国交回復の話で、大平正芳に焦点が当てられている。本書では、日中国交回復では、尖閣問題を議題にせずに、今後も現状凍結することで両国の合意が得られたが、両国首脳間で何となく合意したのであって、合意文書などを交換したわけではないことが、明確に示されている。
   
 本書は、日本と中華人民共和国の外交関係を解説したものであって、その中で、尖閣問題の位置が明確に示されているので、日中関係としての尖閣のりゅゆう権問題を理解するには好適な本である。ただし、尖閣問題全般を俯瞰する目的で書かれた本ではないので、尖閣問題を理解したい向きには、本書だけでは不十分だ。

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