舛田佳弘・他/著・編『「見えない壁」に阻まれて 根室と与那国でボーダーを考える』北海道大学出版会
(2015/7)
国境の町である根室と与那国は政治の問題から海外交流が難しい。本書は与那国と根室について扱っている。
与那国については、台湾との交流をするために町役場の嘱託職員となった研究者の報告。内容は、国境問題や地方自治などではなく、与那国住民との交流や台湾・花蓮市民との交流の話。学者の話なのだから、もう少し学術的内容が多い方が良かったのではないか。この内容ならば、お笑い芸人のレポートの方が面白くて興味が持てる。
根室の話は根室だけで千島に行っていない。「北方領土問題の視点が強い根室市内の観光案内」と言ったところだろうか。
本は70ページ余りと薄いにもかかわらず、根室・与那国と直接関係のない2地点を取り上げているため、内容が薄い。
根室・与那国は国境に接する僻地であるため、取り締まりがおろそかになって密貿易などで栄えたことがある。しかし、合法的な活動で繁栄するためには、どちらも地域の規模が小さすぎる。かつてのように、人の移動が鉄道だった時代ならば、国境の町には何らかのメリットがあったかもしれないが、航空機で海外に行く時代にあっては、国境の町であること自体に取り立ててメリットはないだろう。