『尖閣研究 高良学術調査団資料集』 尖閣諸島文献資料編纂会/著 データム・レキオス (2007)
米国統治下の1950年代から60年代にかけて、動物学者・高良鉄夫を団長とする第一次~五次にわたる学術調査団が、尖閣諸島の動植物を調査した。本書はこの学術調査の報告書・新聞記事・論文・調査メンバーの回顧を収録したもの。
これらの学術調査が行われたとき、尖閣は古賀氏の所有だった。この時代、所有者の許諾のもと、学術調査団が数度にわたって尖閣に上陸し動植物の調査をしている。沖縄が日本に返還される頃になると、尖閣の所有者は古賀氏から埼玉の栗原氏に移った。栗原氏所有時代の尖閣は、学術調査団の上陸を拒否する一方で、広域暴力団住吉会系右翼団体の上陸がなされていたが、この右翼団体が持ち込んだヤギが繁殖して、自然破壊が進んでいる。
(1979年には沖縄開発庁による学術調査が行われている。)
本書は、住吉会系右翼団体が原因で自然破壊が進む以前の尖閣諸島の自然状況を詳細に調査したものであるので、尖閣を知る上で貴重な史料である。
本書によると、尖閣の動植物相は独自であるが、台湾のそれに近く、たとえば爬虫類では、沖縄に普通にみられるハブはおらず、シュウダが多数棲息する。植物ではソテツはどこにも見られない。