孫崎享/著『日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土』 (2011/5/11) ちくま新書 905
日本の領土問題を扱ったまともな本。日本の領土問題を扱った本の多くは、日本政府の主張を焼き直して、自分勝手な意見を主張するものが多い中、この本はそうではなくて、まじめな歴史知識により、現実的な領土問題の解決を目指す。
領土問題では、日本に都合のよい歴史的事実だけを羅列して、都合の悪いことはひたすら無視するか、事実を捏造することが、日本では行われている。こんなことが、領土問題の解決につながらないことは明らかだ。
本書の著者は、長年、外交官として、外交問題にあたってきた。本書は、著者の経験と理性により、領土問題の解決方法の理念を示すもの。本書に示された、歴史的事実は、必ずしも日本に都合の良いことばかりではなく、日本国民を偏狭なナショナリズムに扇動する勢力にとっては、受け入れがたいことかもしれない。しかし、史実は史実として、正しく認識しなくてはならない。北方領土・竹島・尖閣列島に関して、日本政府の主張しか知らない人は、本書を熟読して、冷静になって欲しいものだ。
2010年秋、尖閣問題で日中が衝突したことがあったが、この島々が日中外交では、どのような扱いになっているのか、簡潔にまとめられている。この部分だけでも、一読の価値がある。