尖閣に対する日本の関心(戦後、1970年以前)
台湾の尖閣への関心は、元々そこが台湾漁民の漁場であり、戦前からの既得権状態だったためである。中国の尖閣への関心は、台湾問題と密接に関係している。
これに対して、近年の日本の尖閣への関心は、もっぱら、石油資源にあった。
尖閣が国会で最初に取り上げられたのは、1967年(昭和42年)のことで、委員から「台湾が尖閣を占領している」との報道に対する質問だったが、これに対して、政府は、何ら報告を受けていないと答えているにすぎない。尖閣周辺海底に膨大な原油が埋蔵されている可能性が話題になってくると、政府は、昭和44年に、尖閣列島資源調査費を予算計上した。1970年(昭和45年)以降、石油資源との関係で、尖閣に対する関心が急激に高まっていった。
以下、1960年代から、1970年4月15日の間に、国会で尖閣が取り上げられた質疑応答を記載する。ただし、同一内容が複数の委員会で取り上げられた場合は割愛している
昭和42年06月20日 衆議院 沖縄問題等に関する特別委員会
○渡部一郎委員
…尖閣群島においてこの間から―これは相当程度確認された情報ではありませんけれども、台湾の漁夫がやってまいりまして、沖縄の人々と台湾の人々が両方で魚をとっておる地域であります。ところが、この尖閣群島に先ごろから台湾の人が住みついておって、どうやら占領している気配もある。ある地域では追い返されたという情報が現に流れております。こういう情報については御存じかどうか。それからまた、そういうことがあったら、協議対象、あるいはどういう手を打たれるか、その辺のことについてちょっと伺っておきたいと思うのであります。…
○塚原国務大臣(総理府総務長官) 新聞で見た程度でありまして、私は何ら報告を受けておりません。
昭和42年07月12日 衆議院 外務委員会
○渡部一郎委員
…沖縄の台湾寄りの島、尖閣列島に漁船が非常にやってきております。これは従来からの既存権のようにもなっておるようなのでありますけれども、最近に至ってその尖閣列島に台湾のほうの人々がやってきて基地を設けておるようであります。これではちょっとまずいのではないか。…
○佐藤栄作内閣総理大臣
…沖縄の問題、これはいわゆる施政権がこちらにございませんので、その行き方としては、日本の船が拿捕されたインドネシアに対する態度とはやや違いますけれども、実情をよく話し合いました上で、私どもも台湾に対して場合によったら直接話をしてもいいと思いますが、これはやはり施政権者から話さすりが本筋だ、かように思います。…
昭和43年08月09日 衆議院 沖縄及び北方問題に関す特別委員会
○渡部一郎委員
それでは、私はだいぶ前になりますが、予算委員会及び外務委員会等におきまして、沖縄の尖閣列島のことを問題にいたしました。これは台湾漁民がこの地域に根拠地をつくりまして、そうしてどうやら既得権ができつつある形勢である。これに対して十分御検討を願って、しかるべき外交的措置を講じられたいと申し上げました。その後最近の新聞報道によりますと、私の憂慮したように、事態はますます大根拠地ができ上がっておるようであります。ところが、私のほうには、外務大臣及び外務当局あるいは関係当局からは何の御説明もございせんし、いかなる手を打たれたかも私は存じておりません。これについて御返事を賜わりたい。
○東郷文彦説明員(外務省アメリカ局長)
尖閣列島その他における領海侵犯の問題については、われわれも久しく非常に心配しまして、随時アメリカ大使館、米政府当局に対しまして善処方を申し入れてきておるわけでございます。現実にこれが、直接に警備の手を差し伸べるのがなかなか困難だというようなことで、今日まで満足な結果はまだ得られておりません。なお、最近になりましても、単に漁業のための領海侵犯のみならず、台湾尖閣列島に座礁しておる船を引き揚げるというような作業もやっておるというような話もございまして、まことに遺憾なる事態でございます。その話をわれわれも確認いたしまして、最近またあらためて米国側に対して、相当強いことばをもって善処方を申し入れております。今後の、おっしゃいますように、これがある種の既成事実になるなどということはまことにゆゆしきことでございまして、われわれもこの事態が一日も早く改善するように、今後とも引き続き米側の注意を喚起し、また、それで満足できない場合にはさらにどういう措置がとれるか、怠りなく研究を進めてまいります。
昭和44年02月12日 衆議院 沖縄及び北方問題に関す特別委員会
○小渕恵三委員
…また、近年、沖縄本島南部における天然ガス資源の数年にわたる地質学的調査はその成果により沖縄住民に明るい期待を抱かせるものがある。沖縄のもつ開発可能性に関する評価に関し科学技術的調査の必要をさらに示唆するものとして西表島の未利用資源ならびに尖閣列島の海底資源の活用問題がある。これに関しても必要な学術的調査を適切に配慮し、国家的見地からする沖縄地域の開発計画を考究すべきである。…
昭和44年02月12日 参議院 沖縄及び北方問題に関す特別委員会
○山野幸吉政府委員(総理府特別地域連絡局長)
…本土と沖縄との一体化施策推進のため、資格免許試験二百七十万円余、沖縄経済振興会議の設置運営費二百四十円余、尖閣列島資源調査費九百四十万円余の新規経費を含め所要の経費を計上いたし…
昭和44年04月02日 参議院 沖縄及び北方問題に関す特別委員会
○床次徳二国務大臣(総理府総務長官)
…第二次産業といたしましては、目下めどのつきましたものは、石油の原油の貯油施設でありますが、これに関連いたしましたものが将来は発展できるのではないか。並びに、先ほど申し上げましたその地理的条件から見まして、特殊な産業が導入できるのではないか。具体的に何を選ぶのかということにつきましては、非常に研究しなければならぬことでありますが、いまの石油、並びに、すぐ近くにありまするところの尖閣列島地帯の海底資源の開発―石油でありますが―そういうことが将来には期待できるし、なお、現在やはり同様に資源として見込みのありますのは、天然ガス等について考えられております。…
昭和44年04月15日 衆議院 沖縄及び北方問題に関す特別委員会
○東郷文彦政府委員(外務省アメリカ局長)
尖閣列島の問題につきましては、われわれも、以前に申し上げましたとおり大きな関心を持っておりまして、琉球政府並びに民政府とも随時話し合っております。最近も、お話しのように単に領海侵犯のみならず、小屋がけのところもあったということでございますが、たびたび巡視を最近もいたすようになりまして、小屋がけでやっておるというようなことはなくなったと承知いたしております。なお、島に標識を立てる、あるいは巡視船を補強するために琉球政府に予算を特に計上する等いろいろ手を尽くしまして、領海侵犯あるいは領土の侵犯のようなことはなくなるように、今日からも努力しております。
昭和45年02月24日 衆議院 予算委員会
○山中貞則国務大臣(総理府総務長官)
尖閣列島の石油資源調査に関しましては、私の所管いたします琉球援助費の中で昨年からことしと、二年続けて調査をいたしております。したがって、私どものほうの調査は本年度で終わりますので、通産省と本年度の予算をセットいたします際によく相談をいたしまして、この調査が終わりました後は通産省のサイドによる石油開発公団その他の直接の援助、開発等で具体的な石油資源の開発に乗り出すという計画になっておりますことを御説明申し上げておきます。
昭和45年04月15日 参議院 予算委員会第一分科会
○山中貞則国務大臣(総理府総務長官)
いまの海洋開発の問題でございますが、いまおっしゃるような御注意も必要でありましょうし、ことに石油資源の問題に関連をいたしましては、尖閣列島の海底資源の問題がございます。エカフェの調査に端を発しまして、昨年度に引き続き本年度も政府が東海大学等に委託をいたしまして、尖閣列島の海底資源調査をいたしております。御心配のようなアメリカ資本も注目はして、ある時期においては、若干の動きも見られなかったとも言えないのでありますけれども、現在、日本政府の主導権において調査しております。尖閣列島の調査について、別段アメリカ側から文句が出る、あるいは民間企業といえども、米側資本から横やりが入るということはなくて、このままで日本政府の調査並びにそれが有望であれば、海底資源の開発ということに進んでいけるだろうと思います。大陸だなの問題は、中共と、中華民国との関係もありまして、議論を呼ぶかもしれませんけれども、しかしながら、私どもとしては、明らかに石垣島に属する島でございまするし、それらの点については、資源について、二百メートル以上でありますといろいろと議論も出るかもしれませんけれども、大体において異論は出ないものという判断でもって進めておる次第でございます。
1972年、田中角栄通産大臣(当時)は膨大な石油があることがわかったため、尖閣問題が生じたとの説明をしている。
昭和47年05月09日 衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会
○田中角栄国務大臣(通商産業大臣)
沖縄周辺には御承知のとおり、天然ガス及び石油の資源というのが相当大きなものが確認をされております。東シナ海を中心にしてエカフェが長いこと調査を行なった結果、われわれが考えておったよりも膨大もない石油資源が存在をするということが確認をせられました。しかし、この沖縄、特に尖閣列島の問題などはこの問題から起こったわけであります。石油があるとか天然ガスがあるとかということが確認されないうちは、尖閣列島問題などたいしたことはなかったのですが、これは、相当膨大もない埋蔵量を有するということが公になってから、急遽いろいろな問題が起こってまいったわけでございます。しかも、ここは大陸だな問題としても、台湾との問題とか中国大陸との問題とか、日本に復帰する沖縄との境界線、非常にむずかしい問題が入り組んでいるところがございます。しかし、これは話し合いをしながら、円満に地下資源というものは開発をしていかなければならないということは事実でございます。
最終更新 2019.8