本の紹介−平頂山事件を考える    2022年12月05日
  

 
井上久士/著『平頂山事件を考える』新日本出版社(2022.8)
 
 平頂山とは、中国東北部撫順市近郊の村の名称。
 1932年9月、中国東北部の撫順で、日本の支配に反対する人たちが、蜂起した。彼らの攻撃用の武器は棍棒で、このほか、防衛用に「お札」を持っていた。お札は、弾丸が当たらないとの迷信によるもの。この武装蜂起は、すぐに鎮圧されたが、日本軍は、蜂起の報復として、蜂起部隊が通過した、途中の部落である平頂山住民の皆殺しを図った。蜂起の翌日、平頂山の住民を、姦計により一か所に集め、一斉射撃し、虐殺した。この時殺された老若男女は2000〜3000人。これは、全住民の殺戮を目論んだもので、一斉銃撃の後、死んでいない人を一人一人銃剣で刺殺した。しかし、殺し忘れた人も若干残ったので、事件は瞬く間に中国や世界に知られることとなった。
 
 本書は、歴史学者で平頂山虐殺事件研究の第一人者による執筆で、事件の詳細と日本軍のかかわりを明らかにする。また、日本軍独立守備隊第中隊長川上精一大尉が虐殺の首謀者であることを明らかにしている。かつて、東京理科大学中退の田辺敏雄なる人物は、川上大尉は虐殺に無関係であると主張した。田辺は川上大尉の親族であり、また歴史学者ではないので、川上の言い訳を集めて、自己の主張を組み立てたのかもしれないが、このような主張が日本の右翼勢力の中で賞賛されたことがある。本書では、田辺説を完全に否定している。
 本書は、平頂山事件の経緯と戦前の日本による隠蔽を明らかにすることを目的としているが、10ページほど、歴史修正主義者たちによる事件の矮小化を批判している。


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