本−親鸞復興    2022年12月20日


  
吉本隆明/著『親鸞復興』春秋社 (1995/7)

 著名な思想家なので、新宗教についても、興味ある見解が示されているのだろうかと思って読んでみたが、ガッカリ。
 本書の7割強が親鸞の話で、3割弱が新宗教の話。新宗教の話では「幸福の科学」「統一教会」「オウム真理教」が取り上げられている。

 悪質新宗教に対して、好意的すぎる。統一教会について以下のように記載されている。

(P197)霊感商法はインチキだとジャーナリズムは統一教会を批判しますが、それはちがいます。宗教とか理念というものは、いつも霊感商法に類することを行っています。…だから、霊感商法だからインチキだというような言い方では、ぼくは納得しません。やはり教義の中心を追求して、そこで得るところ、これは得難いところとか、これはちょっとちがうそということを、よくよく検討しないといけないとおもいます。それをひとつひとつ踏まえたうえで問題にしたほうがいいのです。霊感商法程度のことで、統一教会を決めつけたりしないほうがいいとおもいます。
 ずいぶん、寝ぼけた主張だ。たいての新興宗教は、既存宗教の教義や、その国の文化を取り入れて成立する。多くの場合は、いいとこどりをする。このため、教義の根幹に素晴らしいものを含んでいることは多い。しかし、そんなこととは関係なく、反社会行為を行っているならば、それは、悪質宗教だ。たとえば、オウム真理教は殺人や覚醒剤を密造をしたが、教義でいくらごまかしていても、絶対に容認できない悪質宗教であることに変わりはない。統一教会も、いくら『真のお母さま』を連呼しても、詐欺商法の赦免にならない。
 既存宗教から適当に良さそうな言葉を集めて、教義を飾り立てても、犯罪的な行為につながる教義が、容認できないのは当然ではないか。

次のようにも書かれている。
(P194)『原理講論』を読むと、文鮮明という人も一種の超能力体験をしていることです。大川さんとおなじように抽象的な言葉で表現されていますが、悪魔と精神で戦い、肉体で戦うことを経てきた人で、神様と自由に交霊することができるというふうに文鮮明について説明しています。その一方、統一教会の教義の中で、単なる短絡ではなくてバカ話だとおもえるところもあります。それはどういうところかというと・・・やがて、キリスト教だけでなくて、世界の宗教はすべて統一教会の下に統一される、その暁には、韓国語が世界語になると『原理講論』の中に書かれています。
 吉本隆明は『世界の宗教はすべて統一教会の下に統一される』というのは、単なるバカ話だと言っているが、『悪魔と精神で戦い、肉体で戦うことを経てきた』との統一教会の主張が、単なるバカ話でないとでも、思っているように読める。そうだとしたら、貧困な推理力に呆れる。こんなの、どう考えても、信者獲得のバカ話でしかないだろうに。

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