本の紹介−通州事件    2022年12月24日


 
 
笠原十九司/著『通州事件』高文研 (2022/8)
 
 通州事件とは、日本の傀儡政権が起こした反乱事件。この事件については日本軍の責任が大きいが、日本ではこの事件を中国への敵愾心をあおりたてるように利用した。藤岡信勝・三浦小太郎・櫻井よしこ・百田尚樹ら右翼言論人やネット上で散見される通州事件の説明の多くは、事件の背景を知ることなしに、日本人が被害にあったことのみを取り上げて、中国への敵愾心をあおりたてるもの。無知による排外運動は好ましいものではない。
 
 本書は、日中近代史研究の第一人者による通州事件の説明。全体2/3の第一部は通州事件の背景と通州事件の歴史説明。残り1/3の第二部は『通州事件被害者姉妹の生き方』。
 歴史学者の執筆であり、事件の歴史的背景に対する記述が詳しい。記述は簡潔であるが、内容は高度で詳しいので、ある程度の予備知識がないと難しいと思う。
 
 以下、目次を記載する。


 
目次
  
はじめに-通州事件とは何だったのか
 通州事件とは
 通州事件を利用した政府・軍部の「憎しみ」の喚起
 通州事件の「憎しみの連鎖」を喚起しようとする人たち
 通州事件の「憎しみの連鎖を絶つ」被害者の姉妹
 通州事件はなぜ発生したのか-歴史的要因の解明
 
第一部 通州事件はなぜ発生したのか-歴史的要因と全貌の解明
  
序章 通州事件の歴史背景
 アヘン戦争と「禁煙運動」
 支那駐屯軍と関東軍の創設
 辛亥革命と中国の分裂
 中国の統一をめざした国民革命 
 国民革命に干渉した日本
 蒋介石による国民政府の軍事統一
 蒋介石の「安内攘外」政策による「剿共戦」
 
第1章 冀東保安隊はどのような軍隊だったのか
 張学良と干学忠
 関東軍の熱河作戦と東北軍
 塘沽停戦協定と河北特警隊
 梅津・何応欽協定と河北保安隊
 歴史的事件には「前史」がある
 
第2章 冀東防共自治政府と冀察政務委員会
 日本軍の華北分離工作の推進
 (1)華北の「第二の満州国化」構想
 (2)冀東防共自治政府の成立
 (3)冀察政務委員会の成立
 (4)宋哲元と張慶余・張硯田の密約
 一二・九学生運動の展開
 中華民族解放先鋒隊が広めた義勇軍行進曲
 
第3章 中国国民の怒り、怨嵯の的になった冀東政権
 冀東政権を利用した日本人の密輸貿易
 (1)冀東東密輸貿易
 (2)冀東密輸の経路 
 (3)外交問題となった冀東密輸
 (4)華北分離工作のための支那駐屯軍の増強
 (5)都市民衆の抗日民族運動
 (6)冀東密輸と「日本人と朝鮮人の浪人」
 日本人と朝鮮人のアヘン・麻薬の蟹造・密輸・密売
 (1)国民政府のアヘン・麻薬厳禁政策
 (2)国際連盟、麻薬密輸・密売の日本人、朝鮮人の厳罰を要請
 (3)中国人のアヘン・麻薬搬送、販売者の公開処刑
 (4)冀東政権下に日本人と朝鮮人の急増
 (5)冀東政権を利用した日本人、朝鮮人のアヘン・麻薬の密売
 冀東政権とアヘン・麻薬の製造と密売の構造
 (1)熱河省における生アヘンの生産
 (2)大連におけるヘロイン密造
 (3)アヘン・麻薬の密輸・密売の拠点となった天津日本租界
 (4)北平と天津へのアヘン・麻薬搬送の経路となった通州
 (5)「滅種亡国」のアヘン・麻薬の害毒
 
第4章 華北における抗日戦争気運の盛り上がり
 関東軍の内蒙古分離工作と緩遠事件
 綏遠軍支援運動の高揚
 蒋介石の「抗日戦準備」演説
 西安事件と東北軍
 西安事件解決の歓喜
 西安事件後の東北軍
 
第5章 通州事件の発生と全貌
 盧満橋事件と宋哲元の第二九軍
 (1)盧溝橋事件の「前史」
 (2)起こるべくして起こった盧溝橋事件
 (3)拡大派の「下剋上」による華北派兵決定
 (4)第二九軍の北平・天津地域における抗戦
 (5)「北支事変」の開始
 通州保安隊の反乱準備
 通州保安隊の反乱開始
 (1)事件前日
 (2)支那駐屯軍と保安隊の兵力
 通州事件の全貌
 (1)第一方面-翼東政府と通州特務機関、政府関係機関の襲撃
 (2)第二方面-通州日本軍守備隊の兵営をめぐる攻防
 (3)第三方面-日本人、朝鮮人居住区における虐殺、略奪
 通州保安隊反乱の終焉
 
第二部 憎しみの連鎖を絶つ - 通州事件被害者姉妹の生き方
 櫛渕久子さん・鈴木節子さん姉妹との出会い
  
(章のタイトルのみ記載し、項のタイトルは省略)
第1章 満州への移住と病院開設
第2章 通州事件に遭遇した鈴木家
第3章 戦争孤児"になった姉妹
第4章 憎しみの連鎖を絶つ
  
おわりに




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