本の紹介−政治と宗教       2023/2/4



島薗進/編『政治と宗教: 統一教会問題と危機に直面する公共空間 』(2023/1)岩波新書
 
 安倍元総理銃殺以降、統一協会関連の出版が続いている。これらの著書の多くは、長い間、統一協会問題に各方面で取り組んできた人なので、著書の内容も客観的に事実を追ったしっかりしたものが多い。本書は、宗教社会学の泰斗で新興宗教問題に長年取り組んでいる島薗進の編・著なので、より一層しっかりした内容。
 
 本書の半分程度が統一協会の話。残りが創価学会・フランスの反カルト法・アメリカのカルト対策。統一協会の記述は、教義と反社会性を記す第一章と、自民党政治家との癒着関係を記す第二章に分かれる。安倍殺害以降、統一協会問題が頻繁に報道されたため、多くの人が詳しい内容を知ることとなった。本書の記述は、すでに知っていることだと感じる人も多いかもしれないが、5年後、10年後にふたたび新興宗教被害を起こさないためにも、時々読み返してみる価値のある内容に感じる。
 
 島薗進は最終章で統一教会について以下のように記す。日本人の多くが共感する内容だろう。
 『統一教会が多くの被害者を生み、「伝道」という名で人権侵害を犯してきたのはその全過程で継続している。・・・どの時期の関わり方も民主主義を歪め公共空間を脅かすとともに、人権侵害を招き、また被害者の読難を増進させてきたと考えられる。これは十分に明確にされるべき事柄であり、教団は被害者に謝罪し、償いを行うべきものである。政治家や政党もまた、多くの責任を負い、どこに誤りがあったかを明確にすべきである。そのことを明らかにすることは、政府・政治家・政党と教団の責任であるが、研究者やジャーナリズムがその解明に貢献できることは言うまでもない。P205』
 
 第三章は中野毅による創価学会と政治との関係。最終章で島薗進は以下のように書いている。
 『創価学会と統一教会ではだいぶ性格が異なるが、特定宗教団体と政党・政治家の利益共同が行われ、しばしば癒着やもたれ合いと批判されるような事態が展開してきた点では共通点がある。P224』
 統一協会に限らず、創価学会も警戒すべき新興宗教であることは言うまでもないだろう。


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