本の紹介−みんなの宗教2世問題       2023/2/18


横道誠/編著、他/著『みんなの宗教2世問題』晶文社 (2023/2)
 
 安倍元総理射殺の原因に統一協会の2世問題があることがわかり、宗教2世問題が広く関心を持たれた。問題を起こす宗教の多くは、一般的には「カルト」と認識されているので、「カルト2世」問題であるとの見解もある。

 本の前半は、統一協会・エホバ・崇教真光・プロテスタント・創価学会・新宗教・マルチ商法・ヤマギシ会などの、宗教2世被害者の証言。プロテスタントの一件を除き、他のものはすべて「カルト」と思われている団体。プロテスタントにしても、原理主義的なところは、社会に非適合な傾向が強く、一般にはカルトと違いはない。創価学会はカルトではないとする見解もあるが、社会と軋轢を起こしていたという点では、カルトと違いはない。
 宗教2世の証言を読むと、たいへん気の毒で、このような問題を起こす新興宗教には嫌悪を感じる。ただし、宗教の問題だけではなくて、毒親、特に母娘関係が問題にあるように思う。もっとも、金や労働力を搾り取るめに、精神や家庭に問題がある人を引き込むのが、新興宗教の常套手段なので、宗教2世問題は、毒親問題と新興宗教問題の二面性を含んでいるのだろう。

 本の後半は識者による解説、あるいは対談。
 本の前半を読んだ時に、宗教2世問題には毒親問題がかぶさっているように感じたが、編著者の横道は以下のように発言しており、宗教と毒親問題がミックスしているとの感覚は正しいようだ。また、宗教2世問題の中には、親、特に母親の精神疾患、精神異常も関係していることがあるようだ。もちろん、著者の発言通り、問題のある親をカモにして、状況を悪化させている宗教団体の責任は大きい。

横道
 さまざまな教団の2世の話を聞いていると、現代の日本では家庭のなかで存在感を発揮するのは父親より母親であることが多いので、最大のキーパーソンが母親であることは、多いと感じます。
 カルト問題の専門家には、あまり親子問題の話にしたくない、問題は親にも子どもにも影響を与えているカルト団体なんだという人が多いのですが、私はそこは、もう少し複雑だと思っています。親は対カルトでは被害者ですが、子どもに対しては加害者なので、カルト問題は「親次第」という面があると思います。もちろん、親に問題があるとしても状況を悪化させているのは宗教団体なので、そちらを免罪して良いとは思いませんが。(P257)

 (本人の体験について)
 小学校のあいだは、母に完全に抵抗することはできませんでした。発達障害は遺伝率がかなり高いんですけど、母も発達障害の特性が濃厚で、どこでスイッチが入るか予想できず、キレだしたら止まらない人でした。宗教2世に話を聞いていても、発達障害の人の割合がふつうの人よりも高い傾向があると感じます。私もいわゆる「変性意識状態」に入りやすいので、母もそうだったんだろうなと思うんです。だから宗教的体験、スピリチュアルな体験にはピンとくるところがあり、宗教団体の良いカモになる。(P260)

 臨床心理士・信田さよ子氏の以下の指摘は考えさせられる。
(一部省略があります)
 1995年から現在まで、アダルト・チルドレンと自認した女性だけのグループカウンセリングを実施しているが、親の信仰によって苦しんだ人たちが多かった。親の多くが創価学会員だったことも印象深い。
 18歳の女性の父親は創価学会の地域の幹部だったので、毎朝の勤行を欠かさなかった。父親は、勤行をしながら必ず娘を殴るのだった。創価学会の教えで家族全員が染め上げられており、選挙のたびにいろいろな人が自宅に詰めかけて戦争みたいだった。その中心にいるのが父だったので、とにかく毎日が怖かった。
 家を脱出してから、初めて自分の家族が異様だったと思った。一番の発見は、勤行の時の父親は一種の陶酔状態だったと気付いたことだ。勤行で徐々に陶酔状態が高まった父は、一番弱くて小さな娘を殴ることで興奮を発散していたのではないか。(P201,202)
 創価学会に限らず、日蓮宗には人を陶酔させる面がある。陶酔させることが必ずしも悪いわけではないが、信田氏が紹介している事例では、創価学会による陶酔が家族にとって非常に悪い影響を及ぼしている。創価学会の教えにはこのような害毒があるにもかかわらず、漫然と池田大作の教えを広め、選挙に動員している姿勢は、悪質な新興宗教の特徴と言えるだろう。

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