本の紹介−信仰から解放されない子どもたち       2023/3/10

 
横道誠/編著、菊池真理子・末冨芳・安井飛鳥・藤倉善郎・塚田穂高・他/著『信仰から解放されない子どもたち』明石書店 (2023/2)
 
宗教2世問題の本。
前半は、統一教会・オウム・天理教・エホバ・創価学会の信者2世の話。
後半は、編著者と有識者との会談。
 
本書の編著者は「宗教2世」の用語を使うが「カルト2世」「新宗教2世」ではないかとの意見もある。カルト2世と言ってしまうと、創価学会はカルトか否か、との問題が入ってしまって、議論がややこしくなる。本書前半で取り上げた5名は、通常、新宗教といわれるところなので、「新宗教2世」問題ということもできるだろう。もっとも、普通のお寺で、息子に住職を継承させる問題を含めて議論するならば、「宗教2世」問題になるが、これは、会社の経営権の継承と同じく、事業の継承の話であって、いわゆる宗教2世問題とは異なる。
 新宗教でない宗教であっても、一部の原理主義的キリスト教などでは、宗教2世問題が起こるのかもしれない。新宗教や原理主義的キリスト教は、日本社会から遊離している事が多いので、親子問題、特に母娘問題が、社会から遊離して深刻化するのではないかと感じる。
 
 本書前半の宗教2世の話は天理教以外の4件と、編著者自身のエホバの件が深刻で気の毒だ。
 天理教の話は良く分からなかった。ただし、インタビューを整理する段階で削除された内容があったことが、p184に記されているので、天理教に都合の悪いことを書かなかったのだろう。
 天理教以外の、ここに取り上げられた宗教2世問題のすべてに、新興宗教を信じる親の精神的な問題(毒親問題)があるように感じる。精神と生活に問題を抱えているために、新興宗教にハマってしまって、それが子供に悪影響を及ぼしているように感じられる。
 
 本書後半は教育学者・末冨芳、弁護士兼社会福祉士・安井飛鳥、カルト問題ジャーナリスト・藤倉善郎、宗教社会学者・塚田穂高の4氏と編著者との対談。
 末冨芳、安井飛鳥、両氏の話を読むと、教育行政、法規制、司法で宗教2世問題を解決することは、かなり絶望的なような感じがする。創価学会が政権党とくっついているのだから、創価学会の儲けに支障が出るような政策を行えないのは当然だ。
  
 本書の最後に、編著者は以下の記述をしている。
 『「被害者救済法案」と呼ばれてきたものが成立した。しかし、…統一教会2世はもちろん、別の教団出身の宗教2世問題を解決するものではない。献金の取り消し要件も限定的で、創価学会を母体とする与党の公明党によって骨抜きにされたことが、さまざまな識者から指摘された。幅広く手厚い宗教2世支援は今後の課題にとどまっている。』
  
 編著者は「幅広く手厚い宗教2世支援は今後の課題」と書いているが、創価学会が政権党に食い込んでいる以上、不可能ではないだろうか。



北方領土問題  やさしい北方領土問題の話   竹島(独島)問題    尖閣(釣魚)問題 

Blog一覧