尖閣の植物

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 琉球の島々は、少なくとも更新世の初期以降、他の陸地から独立してきた。これに対して尖閣諸島は更新世に入ってからも何度か大陸と接続したことがあり、その最も新しい接続は約2万年前を最寒期とするウルム氷期に起きた。このときは現在の海面よりも120mほど低かったと推定されている。このため、尖閣諸島の動植物は台湾・大陸に近く、琉球とは異なる。
 尖閣諸島の爬虫類は台湾・大陸に近く、宮古・八重山諸島とは遠い。植物相では琉球列島とも関係があり、固有種も生育しているが、中国南部や台湾と関わりの深い種が多い。魚釣島に分布するが、それ以外の日本には産することがない植物に、マルバコケシダやセンカクトロロアオイなど6種(変種を含む)があり、これらの多くは台湾やフィリピンに分布している。また、中国大陸・台湾・日本に産し琉球にはないオオミズゴケが魚釣島に生息している。これは琉球を経由せずに中国大陸から流入したものと考えられる。(参考文献3)

 1978年、指定暴力団住吉会系右翼団体・日本青年社は地主の許可を得て尖閣諸島・魚釣島に上陸、灯台建設後、持ち込んだヤギを放置した。このヤギが自然繁殖し、魚釣島の森林攪乱が進んでいるため、すでにいくつかの種は絶滅した恐れがある。



魚釣島の固有種・固有変種

科名と和名 学名
ウマノスズクサ科・センカクアオイ Asarum senkakuinsulare
オトギリソウ科・センカクオトギリ Hypericum senkakuinsulare
イソマツ科・センカクハマサジ Limonium senkakuense
ツツジ科・センカクツツジ
(シナヤマツツジ あるいは マルバサツキの変種)
Rhododendron simsii var. tawadae

 このほか(参考文献3)には魚釣島の固有変種として「イネ科・ムラサキチヂミザサ(Oplismenus compositus var. purpuracens)」が記載されている。
 魚釣島には「エダウチチヂミザサ(Oplismenus compositus var. compositus)」「オオバチヂミザサ(Oplismenus compositus var. patens)」が分布するが、これらは、琉球列島各島にも分布し、魚釣島固有変種ではない。(参考文献 2,4)

 魚釣島の固有種・固有変種であるセンカクオトギリ、センカクツツジは戦前・戦後に魚釣島から石垣島などに持ち込まれたものがあり、今でも栽培している人がいる。センカクツツジは一鉢1000円から2000円程度で入手できる。



国内では魚釣島のみに産する種・変種

科名と和名 学名 魚釣島以外の分布
ラン科・コウトウヒスイラン
別名:クロイワラン
Vanda lamellata 台湾(蘭嶼),フィリピン,マリアナ諸島,ボルネオに分布(参考文献1,4)
キョウチクトウ科・マメヅタカズラ Dischidia formosana 台湾,中国南部に分布(参考文献4)
コケシノブ科・マルバコケシダ
別名:センカクホラゴケ
Microgonium bimarginatum
Didymoglossum bimarginatum
台湾、東南アジア、インド、ミクロネシア、ポリネシアに分布(参考文献1)
イネ科・コハナカモノハシ Ischaemum setaceum 台湾,フィリピンに分布(参考文献1,4)
魚釣島の他に石垣島にも分布するとの説がある(参考文献4)
キク科・タカサゴアザミ
別名:センカクアザミ
Cirsium japonicum var. australe ノアザミの変種
台湾、中国に分布(参考文献1,4)   
アオイ科・センカクトロロアオイ
Abelmoschus moschatus var. betulifolius トロロアオイの変種
東南アジアに分布(参考文献4)
インドシナ・マレーシアに分布(参考文献1)
魚釣島の他に西表島にも分布するとの説がある(参考文献1)

 コウトウヒスイランを栽培している人がおり、蘭展などに出品されることがある。しかし、魚釣島産なのか台湾などから持ち込まれたものか、分からない。
 マメヅタカズラは鉢植えで売られていることがあるが、おそらく、外国産。


南西諸島では魚釣島にのみ産する種

 オオミズゴケは、北海道から九州までの全国各地や、世界各国に分布し、尖閣諸島の魚釣島にも分布するが、琉球には自然分布しない。中国大陸・台湾・日本に産し琉球にはないオオミズゴケが魚釣島に生息していることは、中国大陸から流入したものと考えられる。ここでは、日本各地や魚釣島に分布するが、琉球には分布しない種を記載する。

科名と和名 学名 魚釣島以外の分布
ミズゴケ科・オオミズゴケ Sphagnum palustre 世界中に分布、日本では北海道から九州にかけて分布
ヤブコウジ科・ヤブコウジ Ardisia japonica 朝鮮・中国・台湾に分布、日本では北海道南部から九州にかけて分布
ブドウ科・ツタ Parthenocissus tricuspidata 朝鮮・中国に分布、日本では北海道から九州にかけて分布
ブドウ科・ノブドウ Ampelopsis brevipedunculata 東アジア一帯に分布、日本では北海道から九州にかけて分布


尖閣諸島に分布する琉球固有の雑種・変種

 尖閣諸島は中国大陸から続く大陸棚の先端にあり、琉球列島とは海溝(沖縄トラフ)により隔てられている。このため、尖閣諸島の動物相は中国大陸・台湾に近く、琉球との関連性は少ない。植物相も、中国大陸・台湾に近いが、琉球列島との関連もある。ここでは、魚釣島に分布する植物で、琉球固有との説があるものを記載する。ただし、琉球固有ついては、疑問点があるものが多い。

科名と和名 学名 説明
サトイモ科・アイノコクワズイモ Alocasia x okinawensis クワズイモとシマクワズイモの雑種。琉球固有?
沖縄島,石垣島・西表島・波照間島・与那国島、魚釣島に分布。
ブナ科・アマミアラカシ Quercus glauca var. amamiana 中国・台湾・日本に広く分布するアラカシの変種。琉球固有変種。
奄美群島・沖縄島・石垣島・魚釣島に分布。奄美群島以外では少ない。
クロウメモドキ科・ヤエヤマネコノチチ Rhamnella franguloides var. inaequilatera 琉球固有変種
奄美群島、沖縄島、宮古島、石垣島、西表島、魚釣島に分布
トベラ科・オキナワトベラ Pittosporum boninense var. lutchuense 小笠原に分布するシロトベラの変種。琉球固有変種。
奄美から八重山まで琉球一帯に広く分布する。魚釣島、久場島に分布。
ヤシ科・クロツグ Arenga engleri 琉球固有種とは言えない。
日本では奄美・沖縄島・宮古・八重山・魚釣島などに分布する。
海外では台湾に分布する。台湾のクロツグは変種との説がある。


尖閣諸島と琉球列島のごく少数の島嶼にのみ産する種・変種

 ここでは、日本各地や近隣諸地域に分布し、魚釣島にも分布するが、わずかの地域を除く琉球列島には分布しないものを記載する。

科名と和名 学名 説明
モクセイ科・シマモクセイ
別名:ナタオレノキ
Osmanthus insularis 小笠原諸島、八丈島、福井、山口、四国、九州~奄美大島、徳之島?、石垣島、西表島、与那国島、尖閣諸島(魚釣島、久場島)、朝鮮(巨文島)、台湾に分布。
ジンチョウゲ科・コショウノキ Daphne kiusiana 本州(関東南部以西)、四国、九州、屋久島、種子島、トカラに分布。国外では、朝鮮南部に分布。奄美大島、徳之島、伊良部島、魚釣島に分布。
変種のタイワンコショウノキが中国大陸・台湾に分布。
シソ科・ハマクサギ Premna microphylla 国内では近畿以西・四国・九州に分布。海外では台湾に分布。
琉球では奄美大島、石垣島、魚釣島に分布。
ルソンハマクサギは石垣島・西表島・与那国島に分布するが、魚釣島には分布しない。
ツゲ科・タイワンアサマツゲ Buxus microphylla subsp. sinica ツゲ(ヒメツゲ)の亜種。
中国、台湾に分布。沖縄島北部、魚釣島に分布。
ラン科・オオキヌラン
別名:センカクキヌラン
Zeuxine nervosa 国外では台湾、フィリピン、タイ、ヒマラヤ、インドシナに分布。
国内では魚釣島、石垣島で分布が確認されているが、ほとんどの分布地で近年確認されていない。
国内で減少の要因として、園芸用採集、自生地の開発、魚釣島野生ヤギの食害が挙げられる。
カヤツリグサ科・イソヤマテンツキ Fimbristylis sieboldii 本州(千葉県・石川県)~九州・屋久島・種子島・トカラ列島・奄美大島・朝鮮(南部)・台湾に分布。
沖縄では沖縄島・外地島・石垣島・魚釣島・久場島に分布。
クスノキ科・キンショクダモ Neolitsea sericea var. aurata シロダモの変種
伊豆諸島(新島)・小笠原諸島・九州・トカラ列島・奄美大島・徳之島・台湾・中国・フィリピンに分布。沖縄では、沖縄島・浜比嘉島・石垣島・西表島・魚釣島に分布。
ウコギ科・キヅタ Hedera rhombea 北海道南部から九州、奄美群島に分布。海外では朝鮮に分布。
沖縄では、沖縄島と粟国島、魚釣島に分布との記録がある。久米島、宮古群島、八重山群島には分布しない。
ムラサキ科・トゲミノイヌチシャ Cordia aspera subsp. kanehirae 分布:台湾,フィリピン、石垣島、西表島、与那国島、久場島(尖閣)

    

その他  尖閣諸島に分布する種(裸子植物、アウストロバイレヤ目、モクレン類) 

 琉球列島を代表する植物と言えば「ソテツ」「リュウキュウマツ」があげられるが、これらは、尖閣諸島には分布しない。それどころか、尖閣諸島に分布する裸子植物は「イヌマキ」一種である。被子植物では、このような特徴は見られず、アウストロバイレヤ目やモクレン類をはじめ、単子葉類も分布する。ただし、スイレン目は見られない。
 ここでは、裸子植物、アウストロバイレヤ目、モクレン類の植物を記載する。

科名と和名 学名 説明
マキ科・イヌマキ Podocarpus macrophyllus 尖閣に分布する唯一の裸子植物
日本国内や中国・台湾に広く分布。ただし、暖地に多い。
琉球各島や魚釣島に分布。大東諸島には分布しない。
マツブサ科・サネカズラ Kadsura japonica アウストロバイレヤ目
国内では、関東以南~九州、奄美群島、渡嘉敷島、宮古群島、八重山群島、魚釣島に分布。
国外では、台湾、韓国(済州島)、中国(暖地)~熱帯アジアに分布。
ウマノスズクサ科・コウシュンウマノスズクサ Aristolochia tagala
Aristolochia tubiflora
Aristolochia zollingeriana
モクレン類・コショウ目
台湾、中国、東南アジアに分布する。日本では、宮古群島に分布する。
参考文献1には魚釣島に分布すると記載されている。
コショウ科・フウトウカズラ Piper kadsura モクレン類・コショウ目
本州(関東南部)~九州、小笠原諸島、琉球各島、北大東島に分布。
尖閣諸島では魚釣島、久場島に分布。海外では、台湾、朝鮮南部に分布。
クスノキ科・クスノキ Cinnamomum camphora モクレン類・クスノキ目
本州~九州、琉球、台湾、中国南部、朝鮮、ベトナムなど広く分布。
ただし、もともと暖地系植物なので、北部の分布は人為的な可能性がある。
魚釣島に分布するとの文献記録がある。
クスノキ科・タブノキ Machilus thunbergii 本州~九州、琉球、台湾、中国南部、朝鮮、フィリピンに広く分布
琉球では奄美大島~沖縄島、八重山、大東などに分布。魚釣島に分布
クスノキ科・バリバリノキ Litsea acuminata 本州(関東南部以西)~九州、琉球、台湾に分布。
琉球では奄美大島、徳之島、沖縄島、伊平屋島、久米島、石垣島、西表島、与那国島、魚釣島に分布。
クスノキ科・ハマビワ Litsea japonica バラ科・ビワとは異なる。
本州(山口・島根以西)、四国、九州、朝鮮南部に分布。
琉球各島に分布、魚釣島に分布、大東諸島に分布しない。
クスノキ科・シロダモ Neolitsea sericea var. sericea キンショクダモはシロダモの変種
本州~九州、奄美群島、沖縄群島、八重山群島、朝鮮、台湾、中国、魚釣島に分布



その他  尖閣諸島に分布する種の一部

科名と和名 学名 説明
ヤナギ科・クスドイゲ Xylosma japonica 本州(近畿以西)、四国、九州、琉球、朝鮮、台湾、中国、フィリピン、インドシナに分布
琉球では伊平屋島、沖縄島、石垣島、魚釣島に分布。
ヤナギ科・トゲイヌツゲ Scolopia oldhamii モチノキ科・イヌツゲとは異なる。
沖縄島、慶良間群島、大東諸島、石垣島、西表島、魚釣島、台湾、中国南部、フィリピンに分布
ウルシ科・ハゼノキ Rhus succedanea 日本では、江戸時代に琉球からもたらされ、蝋の採集に植林された。
国内では、関東以南~九州、小笠原諸島、琉球、北大東島、魚釣島に分布。
国外では、台湾、中国、ヒマラヤ、インドシナ、タイに分布。




名前にセンカクがつく植物

名称 説明
センカクガジュマル クワ科ガジュマル属の植物でセンカクガジュマルの名前で売られているものがある。
ガジュマルの園芸品種か? マルバガジュマルなどの別名か?
センカクミカン ミカン科・センカクミカンが、多和田眞淳/著『尖閣列島の植物相について』(琉球大学農学部学術報告 1954)に記載がある
センカクソウ バラ科・キンミズヒキは漢方薬として使用される。生薬の名前を仙鶴草(せんかくそう)あるいは龍牙草(りゅうげそう)という。尖閣諸島とは関係ない。



琉球の植物分布

 動物分界を示す線として、トカラ列島南部の悪石島と小宝島の間に渡瀬線がある。この線は、植物にも当てはまり、温帯と亜熱帯を分ける境界になっている。また、主に鳥類の分布から、沖縄諸島と宮古・八重山諸島の間に蜂須賀線がある。植物分布では、渡瀬線・蜂須賀線をもとに、大隅諸島以南を、以下の5地域に分ける。

地域 説明
北琉球 渡瀬線以北、大隅諸島と悪石島以北のトカラ列島7つの島。
この地域には温帯系植物が多くみられ、九州島以北の日本列島と植物相が似ている。
中琉球 渡瀬線以南、小宝島、宝島、奄美群島、沖縄諸島。
日本列島形成の初期に他地域から隔離された地域。奄美大島や沖縄島北部には固有種も分布している。
南琉球 宮古諸島と八重山諸島。
最後まで台湾と陸続きであった八重山諸島は台湾との共通種がみられる。
大東諸島 海洋島のため、独自の生態系をなしている。
尖閣諸島 大陸棚の上にある島々からなり、数万年前まで大陸と陸続きであつたため、中国・台湾と共通の種が多い。

 

このページの説明では各地域は、便宜上、次の意味とする。

名称 地域の範囲
琉球、琉球列島 渡瀬線以南の地域で、小宝島、宝島、奄美群島、沖縄諸島、宮古群島、八重山諸島。
中琉球と南琉球を合わせた地域で、尖閣諸島と大東諸島を含まない。
九州 渡瀬線以北の地域で、九州島や周辺諸島の他、大隅諸島と悪石島以北のトカラ列島7つの島。
奄美群島を含まない。
奄美、奄美群島 奄美大島から与論島までの島々。トカラ列島の小宝島、宝島を含む。
沖縄県 沖縄県の行政範囲。
沖縄島以南、宮古群島、八重山諸島、大東諸島、尖閣諸島。
沖縄諸島 沖縄島、慶良間諸島、久米島及び周辺各島を合わせた領域。
奄美群島、尖閣諸島、大東諸島、八重山諸島、宮古群島を含まない。



センカクアオイ

和名:センカクアオイ
学名:Asarum senkakuinsulare Hatus.    ウマノスズクサ科カンアオイ属
分布域:尖閣諸島魚釣島
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)

センカクアオイはウマノスズクサ科であって、アオイ科ではない。

もともと自生地と個体数が限られていたが、右翼団体が野放しにした野生化ヤギによる踏みつけと森林の破壊により、絶滅が危惧される。





撮影場所:国立科学博物館 筑波実験植物園 熱帯山地雨林温室(2022.2撮影)
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 センカクアオイはウマノスズクサ科カンアオイ属の植物。近縁には、カンアオイ、タマノカンアオイ、アマギカンアオイ、ランヨウアオイ、アツミカンアオイ、ミチノクカンアオイ、ヒメカンアオイなど、日本各地に固有な種が分布する。沖縄県の島々にも、以下のような、近縁の固有種が分布する。
 ヒナカンアオイ(沖縄島北部に分布する沖縄島の固有種) 、オモロカンアオイ(石垣島の固有種)、エクボサイシン(西表島の固有種)、モノドラカンアオイ (西表島の固有種)、ヤエヤマカンアオイ(西表島の固有種)

奄美大島から徳之島には、特にカンアオイ属の固有種が多く、以下の11の固有種が分布する。
 アサトカンアオイ(奄美大島)、オオバカンアオイ(奄美大島、徳之島)、カケロマカンアオイ(奄美大島・加計呂麻島・請島・与路島)、グスクカンアオイ(奄美大島)、タニムラアオイ(徳之島)、トクノシマカンアオイ(徳之島)、トリガミネカンアオイ(奄美大島)、ナゼカンアオイ(奄美大島)、ハツシマカンアオイ(徳之島)、フジノカンアオイ(奄美諸島)、ミヤビカンアオイ(奄美大島)

カンアオイ (Asarum nipponicum)
(カントウカンアオイとも言う)
ヒメカンアオイ (Asarum takaoi)
東京大学小石川植物園 薬園保存園・分類標本園 2022/5/24 撮影



センカクオトギリ

和名:センカクオトギリ
学名:Hypericum senkakuinsulare Hatus.    オトギリソウ科オトギリソウ属
分布域:尖閣諸島魚釣島
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)

東京大学小石川植物園 温室4
2022/3 撮影
東京大学小石川植物園 温室4
2022/5/24 撮影


普通のオトギリソウ園芸種(だと思う)  オトギリソウの学名はHypericum erectum
オトギリソウは、北海道~九州、琉球、 サハリン、朝鮮、台湾,、中国に分布する。
石垣島にも分布するが、尖閣諸島には分布しない。
撮影:埼玉県川口市 一般住宅の花壇 2022/5/27

センカクオトギリ
東京大学小石川植物園 2022/6/8 撮影
オトギリソウ園芸種(だと思う)
埼玉県川口市 2022/6/14
ツキヌキオトギリ
筑波実験植物園 2022/6/4 撮影



センカクハマサジ

和名:センカクハマサジ
学名:Limonium senkakuense  イソマツ科 イソマツ属
分布域:尖閣諸島魚釣島
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)

海岸の岩上に生える。分布地は狭い範囲の1ヶ所に限られる。
本種が確認されたのは、1979年の1度だけであり、その後は確認されていない。近年急増している野生化ヤギによる食害で絶滅した可能性が高い。(参考文献1 P238)


 左写真はイソマツ(筑波実験植物園 多目的温室 2022/6/4 撮影)。センカクハマサジではない。

 イソマツはセンカクハマサジと同じイソマツ科イソマツ属の植物で、伊豆諸島、屋久島・種子島など、久米島、慶良間群島、宮古群島、八重山群島、小笠原、台湾に分布する。沖縄島には分布しない。尖閣諸島の魚釣島と南小島・北小島に分布するとの文献記録がある。
 
 イソマツ科の植物では、ルリマツリ属のルリマツリが園芸として栽培されている。










センカクツツジ

和名:センカクツツジ
学名:Rhododendron eriocarpum (Hayata) Nakai var. tawadae Ohwi
    Rhododendron simsii Planchon var. tawadae
ツツジ科ツツジ属
分布域:尖閣諸島魚釣島
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)


撮影場所 東京大学小石川植物園 温室4  (2022.3撮影)   花はほとんど終わり





撮影場所 東京大学小石川植物園 屋外(ツツジ園)  (2022.4.15撮影)   他のツツジ類は見ごろだったが、センカクツツジの花は終わっていた。



 センカクツツジの学名は2種類ある。
 一つは、Rhododendron eriocarpum var. tawadaeで、これだとRhododendron eriocarpum(和名「マルバサツキ」)の亜種になる。「マルバサツキ」は九州南部などに分布するツツジで、サツキとともに園芸用交配のもととなっているため、現在、この系統の園芸品種が庭木や鉢植えなどで広く栽培されている。
 もう一つの学名は、Rhododendron simsii Planchon var. tawadaeで、これだとRhododendron simsii(和名「シナヤマツツジ」)の亜種になる。「シナヤマツツジ」は、中国南部、台湾などに分布するツツジで、「トウヤマツツジ」「タイワンヤマツツジ」とも言われる。シナヤマツツジをベルギー・オランダで品種改良したものが「アゼリア(和名:セイヨウツツジ)」で、園芸品種として、日本でもおなじみ。
 マルバサツキは九州南部、屋久島、種子島、トカラ列島に分布し、奄美大島以南には分布しない。 尖閣にも分布しない。
 シナヤマツツジは中国南部、台湾のほか、西表島に分布する。尖閣には分布しない。

 センカクツツジは躑躅(ツツジ)だろうか、皐月(サツキ)だろうか。サツキはツツジ科ツツジ属なので、ツツジとサツキに大きな違いはない。ただし、園芸種では、最初にアゼリアが咲いて、4月ごろにツツジが咲いて、5月中頃からサツキが咲く。地域によって、あるいは品種によって異なる。センカクツツジの開花期は2月から3月なので、アゼリアに近くサツキには遠い感じがする。

センカクツツジ マルバサツキ シナヤマツツジ
東京大学小石川植物園 ツツジ園  2022/5/24 撮影


 左写真はサキシマツツジ。サキシマツツジは久米島、石垣島、西表島に分布する。春葉と夏葉に違いはない。
 (東京大学小石川植物園 2022/6/22 撮影)




 左写真はケラマツツジ。ケラマツツジは奄美大島、沖永良部島、慶良間を含む沖縄諸島に分布する。名前は慶良間諸島にちなんでいるが、慶良間特産ではない。赤い花が美しいので、園芸栽培されている。
 (東京大学小石川植物園 2022/6/22 撮影)




コウトウヒスイラン

和名:コウトウヒスイラン
学名:Vanda lamellata     ラン科・ヒスイラン属
分布域:台湾(蘭嶼)、フィリピン、マリアナ諸島、ボルネオ。日本では尖閣諸島魚釣島。
 
 ヒスイラン属は東南アジアを中心に60種ほどが存在する。コウトウヒスイランは日本に分布する唯一のヒスイラン。名称のコウトウは蘭嶼の旧名称『紅頭嶼』に因んでいる。
 魚釣島では近年は全く確認されていないが、1920 年代には確実に自生していたと思われる。減少の要因として、もともと自生地と個体数が少ないこと、園芸用の採集、および、野生化ヤギの増殖による生育環境の悪化があげられる。(参考文献1、P428)

 コウトウヒスイランを栽培している人がいるが、魚釣島から採集したものを育てているのか、外国産のものだか分からない。

 「コウトウヒスイラン」と似た植物に「イリオモテラン(ニュウメンラン属)」があり、国内では石垣島、西表島、魚釣島に自生し、海外では台湾・フィリピンに自生する。魚釣島のコウトウヒスイランはイリオモテランを見間違えたのではないかとの説がある。

 下写真はヒスイランの一種Vanda lunabatan。コウトウヒスイランではない。

撮影:2022/3 小石川植物園 温室6 撮影:2022/6/22 小石川植物園 温室6



 左写真は ニュウメンラン属イリオモテランの花。
 魚釣島のコウトウヒスイランはイリオモテランを見間違えたのではないかとの説がある。
 
 撮影:2022/6/22 小石川植物園 温室6





マメヅタカズラ

和名:マメヅタカズラ
学名:Dischidia formosana Maxim     キョウチクトウ科・マメヅタカズラ属  (ガガイモ科とされることもある)
分布域:台湾、中国南部。日本では尖閣諸島魚釣島。
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)


 シダ植物のマメヅタに姿が似ているため、この名前がある。 
 魚釣島では山頂付近の雲霧帯の樹上や岩上にへばりつくように着生する。ごく狭い範囲に数個体があるだけである。魚釣島では野生化ヤギの増殖により、森林生態系が大きく悪影響を受けており、本種を初め魚釣島に産する種の生育環境の悪化と絶滅が危惧される。(参考文献1、 P247)

 マメヅタカズラの分布は筑波実験植物園の説明板や参考文献1では魚釣島、台湾としている。参考文献4では魚釣島、台湾、中国南部としている。

マメヅタカズラの学名
 参考文献1,4では「Dischidia formosana Maxim」とする。
 参考文献2、3では「Dischidia nummularia var. rhombifolia」とする。

マメヅタカズラ
筑波実験植物園 多目的温室 2022/6/4 撮影

 マメヅタカズラ属の植物は、シダ植物のマメヅタに比べ販売価格が高いので、プラントショップで販売されている場合は「ディスキディア」と言われることが多いようだ。「ディスキディア・ヌンムラリア(Dischidia nummularia)」が販売されていることもある。また、マメヅタカズラ属の近縁植物にホヤ属(Hoya)があり、こちらも、プラントショップで販売されていることがある。

ディスキディア属の種 ディスキディア属の種 ホヤ属
Hoya brevialata
ホヤ属
Hoya multiflora の花
小石川植物園 温室6 2022/5/24撮影 小石川植物園 温室6 2022/5/24撮影 小石川植物園 温室6 2022/5/17撮影 小石川植物園 温室6 2022/5/17撮影


コハナカモノハシ

和名:コハナカモノハシ
学名:schaemum setaceum Honda     イネ科・カモノハシ属
分布域:台湾、フィリピン。日本では尖閣諸島魚釣島。

海岸の岩場に生える。

『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版』では国内分布は魚釣島のみとする(参考文献1 P333)。『国立科学博物館 琉球の植物データベース』(参考文献4)では、文献に基づく分布に石垣島, 魚釣島とする。

タカサゴアザミ

和名:タカサゴアザミ
学名:Cirsium japonicum DC. var. australe Kitam.     キク科・アザミ属
分布域:台湾、中国。日本では尖閣諸島魚釣島。
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)


タカサゴアザミは日本各地にみられるノアザミの変種。ノアザミの変種は多種類存在しアジア各地に分布する。
 
タカサゴアザミは高さ 50~100 cm に達する多年草。根生葉は倒卵状狭長楕円形、葉縁は 5~6 対に羽状に分裂し、茎葉は長楕円形で、基部は茎を抱く。頭花は枝先につき、球形で紫色または紅色を帯びる。

魚釣島の1ヶ所から記録されているが、その後確認されていない。日本で唯一の産地である魚釣島に隔離分布し、中国大陸と魚釣島の植物相の共通性を示す植物である。(参考文献1、P290)


 左写真はノアザミ。タカサゴアザミではない。
 ノアザミは日本各地で、もっとも普通にみられるアザミ。

 撮影:2022/5 千葉県山武市。





イガアザミ
筑波実験植物園 屋外 2022/6/4 撮影
ハチジョウアザミ
筑波実験植物園 屋外 2022/6/4撮影
フジアザミ
小石川植物園 2022/6/8 撮影

センカクトロロアオイ

和名:センカクトロロアオイ
学名:Abelmoschus moschatus (L.) Medik. var. betulifolius (Mast.) Hochr.     アオイ科・トロロアオイ属
分布域:インドシナ、マレーシア。日本では尖閣諸島魚釣島。西表島にも分布するとの説もある
絶滅危惧カテゴリー(環境省レッドリスト) CR(絶滅危惧IA類)

 トロロアオイは和紙作りとともに中国から日本に伝わり、和紙を作るときの接着剤に使われ、かつては、国内で広く栽培されていた。また、「花オクラ」とも言われ、園芸として栽培されることがある。蕎麦のつなぎに使われることもある。
 トロロアオイは1.5m程度であるのに対して、リュウキュウトロロアオイやセンカクトロロアオイは2m程度になる。リュウキュウトロロアオイは海外ではアジアやオセアニアに分布し、国内ではトカラ列島、琉球、小笠原などに分布する。これらは、自然分布ではなく、薬用として栽培され、その後、帰化したものが多い。
  
 センカクトロロアオイはリュウキュウトロロアオイの変種で、葉や茎に毛が少なく、果実に剛毛が多く、中央が太くふくらんでいる点で基本変種と区別されるが、分類学的な再検討が必要である。よく似たものは、最近、西表島でも確認されている。
 魚釣島自生地は1ヶ所のみで、もともと個体数は少ない上、魚釣島では野生化したヤギが多く、食害が進んでいるものと思われ、絶滅が危惧される。(参考文献1、P212)


オオミズゴケ

和名:オオミズゴケ
学名:Sphagnum palustre  ミズゴケ科ミズゴケ属
分布域:世界中に広く分布する蘚類。日本では、北海道から九州にかけて、最も一般的なミズゴケであり、尖閣諸島の魚釣島にも分布するが、琉球には自然分布しない。
 
ミズゴケ科の蘚類は日本に40種以上ある。一見したところ同じように見えるものもあり、オオミズゴケであることを正確に見分けることは難しい。
日本の園芸で、ラン栽培が流行すると、栽培土壌にオオミズゴケが使われた。このため、全国各地でオオミズゴケが乱獲され、絶滅の危機が叫ばれたことがある。近年は、海外のミズゴケが輸入されるため、日本のオオミズゴケの乱獲はなくなった。園芸用品店に行くと乾燥ミズゴケが安価で大量に販売されているが、乱獲の輸入になっている。

オオミズゴケは苔栽培に使用されるため、園芸店で売られている。このため、沖縄県でも、自宅でオオミズゴケを栽培している人もいる。

北海道から九州まで全国各地に分布し、海外でも、中国、台湾をはじめ世界中に分布するオオミズゴケであり、尖閣諸島の魚釣島にも分布するが、琉球各地には自然分布しない。中国大陸・台湾・日本に産し琉球にはないオオミズゴケが魚釣島に生息していることは、中国大陸から流入したものと考えられる。


ヤブコウジ

和名:ヤブコウジ(藪柑子)  別名:十両、ヤマタチバナ
学名:Ardisia japonica    サクラソウ科ヤブコウジ属
分布域:日本では北海道(奥尻島)、本州、四国、九州、薩摩黒島、屋久島、種子島、トカラ列島にかけて分布、海外では朝鮮、中国、台湾に分布  (参考文献4)

 日本で広く分布しているヤブコウジは、奄美群島・沖縄群島・宮古群島・八重山群島では自然分布していないが、尖閣諸島の魚釣島に分布する。
 魚釣島が台湾や中国大陸と陸続きであったときに渡来したと思われ、北琉球以北の分布域とは大きく離れていることから、由来が異なる可能性があり、植物地理学上貴重である。しかし、魚釣島では1991年の調査でも確認されておらず、急増している野生化ヤギの食害で、絶滅した可能性がある。(参考文献1 P236)


 ヤブコウジは赤い実が美しいので、盆栽や、正月飾りの寄せ植えに利用される。

撮影場所 東京大学小石川植物園 薬園保存園  (2022.5.17撮影)


ツタ

和名:ツタ(蔦)  ナツヅタ(夏蔦)とも言われる
学名:Parthenocissus tricuspidata    ブドウ科ツタ属
分布域:北海道~九州、屋久島、種子島、尖閣諸島の魚釣島、朝鮮、中国
     奄美諸島、沖縄島、宮古、八重山などには自然分布はない。 

 ツタは渡瀬線の北には普通に分布するが、渡瀬線以南の島嶼には魚釣島以外分布しない。トカラ列島の宝島や奄美群島にも分布しない。渡瀬線以北のトカラ列島の島嶼には分布する。

 ウコギ科のキヅタはツタと類似しているが、別の植物。

 ツタは、日本全国、どこでもおなじみのありふれた植物。沖縄県でも、花屋で売られていることもあるので、自分の庭や家の壁にツタを這わせている家もある。しかし、魚釣島以外、奄美・琉球にツタは自然分布していない。(参考文献4)
 北海道から九州まで分布するものが、魚釣島のみに分布する点で植物地理学的に興味深い。(参考文献1)



 ツタは古くから親しまれているので、家紋にも使われる。左は三ツ蔦。


ノブドウ

和名:ノブドウ
学名:Ampelopsis glandulosa var. heterophylla ブドウ科ノブドウ属
分布域:南千島、北海道から九州、朝鮮、中国に分布。尖閣諸島の魚釣島に分布するとの記録がある。奄美群島、沖縄群島、宮古、八重山群島には分布しない。 (参考文献4)
 
 国内では九州島南部まで分布するが、大隅諸島以南では魚釣島だけに分布し、植物地理学上重要である。上陸して調査が行われた最後の調査(1991年)では、確認されていない。魚釣島自生地では野生化したヤギが殖えており、食害が進んでいるものと思われる。 (参考文献1 P442)

 ノブドウによく似ている変種にテリハノブドウ(学名:Ampelopsis glandulosa var. hancei)があり、本州から九州、台湾、中国南部、東南アジアに分布し、奄美群島、沖縄群島、宮古、八重山諸島にも分布する。テリハノブドウは葉裏や若枝に毛がない特徴がある。
 参考文献2には、魚釣島分布種としてノブドウが記載されテリハノブドウは記載されていない。参考文献4ではテリハノブドウが魚釣島に分布すると記されている。
 比較的寒冷地にも見られるノブドウが尖閣に自生し、温暖地にみられるテリハノブドウが尖閣にないのは、不思議な感じがする。 

ノブドウ
東京大学小石川植物園 分類標本園 2022/5/24 撮影


アイノコクワズイモ

和名:アイノコクワズイモ
学名:Alocasia x okinawensis
サトイモ科 クワズイモ属
分布域:琉球固有種? 沖縄島,石垣島・西表島・波照間島・与那国島、魚釣島に分布(参考文献4)

 アイノコクワズイモはクワズイモと、シマクワズイモの雑種
 魚釣島にはアイノコクワズイモ、クワズイモは分布するが、シマクワズイモは分布しない。(参考文献2)
 クワズイモは四国南部、九州、奄美、沖縄県(大東諸島を除く)、台湾、中国南部、インドシナ、インドなどに分布。宮古、八重山、魚釣島に分布。
 シマクワズイモは奄美大島、沖縄島、宮古群島、小笠原、台湾、中国南部、東南アジア、インドなどに分布。

 クワズイモとシマクワズイモは共に琉球に分布するため雑種ができる可能性はある。しかし、それならば、同じように両種が分布する台湾~インドでも、雑種が存在する可能性があるのではないだろうか。
 
 クワズイモとシマクワズイモを比較すると、クワズイモに比べてシマクワズイモは明らかに小さい。クワズイモの葉の長さは60㎝程度になるのに対して、シマクワズイモは半分以下。また、葉脈の側脈の形も違う。クワズイモの側脈は縁まで直線的なのに対して、シマクワズイモでは、葉の先端方向に曲がる。葉の付け根は、クワズイモでは大きく切れ込むのに対して、シマクワズイモでは切れ込みが小さい。葉の縁部の波打がクワズイモで大きい。 葉の先端部は、シマクワズイモが尖った感じ。
 ダイソーでクワズイモ、あるいはシマクワズイモが \300+税 で売られていることがある。


 小石川植物園5号温室に、シマクワズイモ、ヤエヤマクワズイモ、アイノコクワズイモの鉢植えが展示されている。ヤエヤマクワズイモ(Alocasia atropurpurea)は沖縄島・西表島・フィリピンに分布する。
 葉の長さを比較すると、シマクワズイモ、ヤエヤマクワズイモ、アイノコクワズイモ、それぞれ大きいもので、17㎝、23㎝、30㎝。側脈はシマクワズイモでは先端側に湾曲するのに対して、ヤエヤマクワズイモはあまり湾曲せず、アイノコクワズイモはほとんど湾曲しない。葉の付け根の切れ込みは、シマクワズイモではあまりない、ヤエヤマクワズイモでは広い、アイノコクワズイモは狭く深い切れ込みになっている。
 アイノコクワズイモと普通のクワズイモを比べると、葉の大きさが小さい他は、見た感じ違わない

アイノコクワズイモ シマクワズイモ ヤエヤマクワズイモ
撮影場所 東京大学小石川植物園 5号温室  (2022.6.22撮影)

アイノコクワズイモ シマクワズイモ ヤエヤマクワズイモ
撮影場所 東京大学小石川植物園 5号温室  (2022.6.22撮影)



アマミアラカシ

和名:アマミアラカシ
学名:Quercus glauca var. amamiana
ブナ科 コナラ属
分布域:奄美群島・沖縄島・石垣島・魚釣島に分布。奄美群島には普通に分布するが、それ以外の地域では少ない。
       中国・台湾・日本に広く分布するアラカシの変種  琉球固有変種

 アラカシ(Quercus glauca)はブナ科コナラ属の植物。変種を含めれば、本州~九州、琉球、台湾、中国など東アジアに分布する。本州では主に関西以西に多く、関東ではシラカシ(Quercus myrsinifolia)が多い。アラカシはシラカシに比べ、葉の幅が広い。アラカシ、シラカシともにクロガシとも呼ばれる。

 アマミアラカシ(Quercus glauca var. amamiana)はアラカシの変種で、葉の幅がアラカシよりも細い。渡瀬線以北に分布するアラカシは基本種のアラカシ(Quercus glauca)で、奄美群島・徳之島・沖縄島・石垣島・魚釣島にはアラカシの変種であるアマミアラカシ(Quercus glauca var. amamiana)が分布する。ただし、魚釣島にはアラカシが分布するとの報告もある。(参考文献2)
 アマミアラカシは奄美群島には普通に分布するが、それ以外の地域では少なく、石垣島の採集報告は1件のみ。(参考文献5)
 
 ところで、台湾のアラカシは基本種なのだろうか。もしそうなら、本州からトカラに分布するアラカシ基本種が、奄美・沖縄諸島・八重山諸島を飛び越えて、台湾に分布していることになり、分布の成因に興味が持てる。

 琉球には、ブナ科コナラ属の植物では、アマミアラカシの他、オキナワウラジロガシ、ウバメガシ、ウラジロガシが分布するが、これらは魚釣島には分布しない。

下の写真は「アカガシ」と「シラカシ」。アマミアラカシやアラカシではない。

アカガシ アカガシ シラカシ
撮影場所 東京大学小石川植物園  (2022.6.22撮影)



オキナワトベラ

和名:オキナワトベラ
学名:Pittosporum boninense var. lutchuense
トベラ科 トベラ属
分布域:奄美から八重山まで琉球一帯に広く分布する。魚釣島、久場島に分布
       小笠原に分布するシロトベラの変種

 トベラ科・トベラ属トベラ(Pittosporum tobira)は本州から九州・台湾・中国南部に分布する常緑樹で、海岸地帯に多いが、道路の脇、公園、庭木などにも広く栽培されている。奄美~八重山にもトベラに近い植物は広く分布しているが、本州~トカラのトベラと同一種なのか、諸説ある。
 
 琉球に分布するトベラの学名は「P. tobira」「P. tobira var. lutchuense」「P. lutchuense」「P. lutchuense var. lutchuense」「P. boninense var. lutchuense」などがあり、和名も「トベラ」「オキナワトベラ」「リュウキュウトベラ」がある。
 参考文献4では、奄美から八重山までの琉球に分布するトベラは「P. boninense var. lutchuense」で、和名は「オキナワトベラ」または「リュウキュウトベラ」と記されている。これだと、琉球には、いわゆるトベラは分布せずに、小笠原に分布する「シロトベラ」の固有変種が分布することになる。
 参考文献2によると、1960年代以前の尖閣植物記録では、魚釣島のトベラは、オキナワトベラ(P. lutchense)とされているが、1970年代以降の記録では、魚釣島のトベラは本州などと同じトベラ(P. tobira)となっている。
 
 トベラとオキナワトベラを比較すると、オキナワトベラの葉はやや薄いのに対して、トベラの葉は革質でやや厚く、裏側に巻く傾向がある。オキナワトベラの花はまばらなことが多く、やや垂れ下がることもある。トベラの花は密集して上向きに付く。ただし、琉球にもトベラによく似た個体もあり、両種を分けない見解もある。(参考文献5)

 トベラ科のタイワントベラ(Pittosporum pentandrum)は中国南部・台湾・ベトナム・フィリピン・インドネシアなどに分布する。


クロツグ

和名:クロツグ
学名:Arenga engleri
ヤシ科 クロツグ属
分布域:奄美から八重山までの琉球各島、トカラ列島、台湾に分布。大東諸島、魚釣島に分布(参考文献4)

 クロツグは「タイワンヤシ」の名称で販売されていることがある。

 台湾に分布するクロツグは、琉球各島に分布するが、琉球のクロツグは別種あるいは変種であるとする見解もある。この場合、琉球に分布するクロツグの学名は、Arenga ryukyuensis あるいは Arenga engleri var. engleri となる。
 クロツグは九州南部や小笠原で野生化している。八重山のクロツグは東南アジアに広く分布するコミノクロツグとされてきたが、現在はクロツグに含められている。(参考文献5)

 八重山のクロツグを東南アジアに広く分布するコミノクロツグ(Arenga tremula)であり、クロツグはその変種であるとする見解にしたがうと、クロツグの学名は、Arenga tremula Becc. var. engleri Hatusia となる。この場合、琉球におけるクロツグの分布域は、国頭、中頭、伊江島、伊平屋、久米島である。

 尖閣・琉球に分布するヤシ科の植物には「クロツグ」のほか「ビロウ」がある。
 「ビロウ」は四国・九州から琉球、台湾に分布する。「クバ」とも言われ、尖閣諸島の久場島の名称はこれに由来する。台湾、東南アジア、インドなどにある「ビンロウ」とは別種。

 琉球に分布するヤシ科の植物は、「クロツグ」「ビロウ」のほか、「ヤエヤマヤシ」「ニッパヤシ」などがある。
 「ヤエヤマヤシ」は、石垣島・西表島に分布する琉球固有のヤシ。
 「ニッパヤシ」はインド・マレーシア・ミクロミクロネシアに分布するが、琉球でも西表島および近隣の内離島に分布する。
 このほかにも、琉球各地には、トックリヤシやココヤシなどのヤシ科の植物が、庭木や街路樹に植えられている。

撮影場所:筑波実験植物園 撮影場所:熱川バナナワニ園



シマモクセイ

和名:シマモクセイ  ナタオレノキ とも言われる
学名:Osmanthus insularis  モクセイ科 モクセイ属
分布域:本州(福井県以西)、八丈島、四国、九州、屋久島、種子島、トカラ列島、小笠原諸島、朝鮮(巨文島)、奄美大島、徳之島?、石垣島・西表島・与那国島,魚釣島、久場島(参考文献4)  台湾(参考文献1)
 山口県立山口博物館の解説では、台湾のほか中国に分布。

 渡名喜島では、分布が確認された。石垣島では海岸から山地まで、点々と産することが確認されている。西表島ではまれで、個体数は少ないが、2017 年にも確認されている。与那国島の現状は不明。魚釣島では、急増している野生化ヤギの影響で、食害を受けたり、自生地が悪影響を受けている可能性があるが、現状不明。(参考文献1)

 シマモクセイは材が硬いのでナタオレノキ(鉈折れの木)とも言われる。ハチジョウモクセイの名前もある。
 栽培種のキンモクセイ、ギンモクセイや、九州南部に分布するオオモクセイと同属。キンモクセイ、ギンモクセイ、オオモクセイの樹高は最大でも4m程度なのに対して、シマモクセイは10mを超える大樹になる。

撮影場所 東京大学小石川植物園 (2022.6.22撮影)

 小石川植物園にはシマモクセイが数本植えられている。入口を入って左側のトイレ前を少し進んだ先の左側に、オオモクセイとシマモクセイが並んで植えられている。葉の形も幹の肌も似ている。


コショウノキ

和名:コショウノキ
学名:Daphne kiusiana  ジンチョウゲ科・ジンチョウゲ属 
分布:本州(関東南部、京都府以西)、四国、九州、屋久島、種子島、トカラ列島、朝鮮(南部)、奄美大島、徳之島、伊平屋島、魚釣島に分布(参考文献4)
 台湾・中国に分布するタイワンコショウノキは変種とされている。
 
 コショウノキは、一部の県では絶滅危惧種に指定されているものの、関東以西から鹿児島までは、それほど珍し植物ではない。しかし、沖縄県では魚釣島を除けば、伊平屋島に、ごくわずかに分布しているのみである。
 伊平屋島ではこれまで 1 ヶ所でのみ確認されていたが、2017 年に新たに 1 ヶ所で確認された。いず れの自生地でも個体数は少ない。魚釣島の現状は不明で、魚釣島では野生化したヤギによる食害が 進んでいる可能性が高い。(参考文献1)

 コショウノキは、樹高1m程度の常緑低木で、ジンチョウゲに似る。花色はジンチョウゲが薄いピンク色が多いのに対して、コショウノキの花は白色。ただし、シロバナジンチョウゲも白色です。
 名称はコショウノキだが、香辛料のペッパー(Piper nigrum)とは関係ない植物。
 


 ハマクサギ

和名:ハマクサギ
学名:Premna microphylla シソ科・ハマクサギ属
分布:本州(近畿以西)、四国、九州、屋久島、種子島、台湾、中国、奄美大島、魚釣島に分布
  このほか、参考文献4では、石垣島に分布とあるが、参考文献1,5では分布の記載がない。

 ハマクサギは、一部の県では絶滅危惧種に指定されているものの、近畿以西から鹿児島までは、それほど珍し植物ではない。奄美大島でも、やや普通に分布している。しかし、沖縄県では魚釣島を除けば、あったとしても、石垣島に希に分布しているのみである。
 ハマクサギは樹高2~10mになる落葉小高木。

 ハマクサギと同属の ルソンハマクサギ(Premna nauseosa)は 石垣島、西表島、与那国島、台湾、中国海南島、フィリピン に分布する。
 同じく、同属の タイワンウオクサギ(Premna serratifolia) は 琉球各島から、台湾、熱帯アジア、オーストラリア に分布する。
 ルソンハマクサギ、タイワンウオクサギ 共に、尖閣諸島には分布しない。

 日本全国に広く分布する クサギ(Clerodendrum trichotomum) はハマクサギとは「属」が異なる。クサギは、日本全国のほか、朝鮮・中国大陸・台湾に分布する。


 タイワンアサマツゲ

和名:タイワンアサマツゲ
学名:Buxus microphylla subsp. sinica  ツゲ科・ツゲ属
分布:台湾、中国 沖縄島(北部)、魚釣島に分布(参考文献4)
 タイワンアサマツゲの沖縄島分布は、北部の尾根付近の風衝地の岩場やシイ林など、限られた地域である。
 沖縄島では極めてまれで、数ヶ所で記録されているが個体数は少ない。現在確認されている確実な自生地は 2 ヶ所のみであるが、その一部は米軍演習地の拡大により伐採された可能性がある。(参考文献1)

 日本各地の庭木などに植えられている「ツゲ」は園芸品種であることが多い。本州から九州に分布する自然種のツゲはアサマツゲとも言われる。このほか、琉球以外の日本各地にヒメツゲも分布している。また、中国・朝鮮のほか日本の一部にはチョウセンヒメツゲが分布する。タイワンアサマツゲ、ツゲ、ヒメツゲ、チョウセンヒメツゲはそれぞれ、変種の関係にある。
  タイワンアサマツゲ B. microphylla subsp. sinica
  ツゲ B. microphylla var. japonica
  ヒメツゲ B. microphylla var. microphylla
  チョウセンヒメツゲ B. microphylla var. insularis
 ただし、タイワンアサマツゲはツゲとは別種とする説もある(参考文献5)

 沖縄県各島にはこのほかに、オキナワツゲ(Buxus liukiuensis)があるが、オキナワツゲは尖閣には分布しない。
 ツゲの葉が長さ10mmから15㎜にたいして、タイワンアサマツゲは15mmから35㎜と大きい。オキナワツゲは25mmから55㎜とさらに大きい。

 タイワンアサマツゲ・ヒメツゲ・ツゲ・チョウセンヒメツゲは「Buxus microphylla」の変種であり、オキナワツゲは別種の「Buxus liukiuensis」である。「Buxus microphylla」は、中国・朝鮮・台湾・本州・四国・九州・魚釣島に分布する。尖閣以外の沖縄県では、沖縄島北部に一部分布するのみである。これに対して、「Buxus liukiuensis」は、尖閣諸島を除く沖縄県各島に広く分布する。

注)ヒメツゲ・ツゲは参考文献4では、琉球に分布する植物に含まれていない。しかし、これらの園芸種は鉢植えなどで、プラントショップで販売されていることがあるので、沖縄県でも栽培している人がいる。自然界に逸出したものもあるはずなので、沖縄島にもヒメツゲ・ツゲは一部生育しているはず。


 シロダモ・キンショクダモ

和名:シロダモ
学名:Neolitsea sericea var. sericea クスノキ科・シロダモ属
分布:本州~九州、奄美群島、沖縄群島、八重山群島、朝鮮、台湾、中国、魚釣島

和名:キンショクダモ
学名:Neolitsea sericea var. aurata  クスノキ科・シロダモ属
   あるいは Neolitsea aurata 
分布:伊豆諸島、小笠原諸島、九州(西部)、トカラ列島、台湾、中国に分布。
   琉球では徳之島、沖縄島、浜比嘉島、石垣島、西表島。魚釣島に分布。

 キンショクダモは葉の裏側に金色の毛があるシロダモの変種、あるいは別種。ただし、シロダモからキンショクダモへの変化は連続的。

 野球のバットに使う「タモの木」は真正双子葉類のモクセイ科トネリコ属。これに対して、シロダモはモクレン類のクスノキ科・シロダモ属なので、かなり縁遠い植物である。


キヅタ

和名:キヅタ (フユヅタ)
学名: Hedera rhombea 
ウコギ科 キヅタ属
分布域:北海道~九州、奄美群島、沖島、朝鮮に分布。  魚釣島に分布するとの説としないとの説がある
       久米島、宮古群島、八重山群島には分布しない

 キヅタの葉はブドウ科のツタに似ているが、ウコギ科のため、花の形は全く違う。また、冬でも落葉しないので、フユヅタの名称もある。
 キヅタの近縁種、セイヨウキヅタ(学名:Hedera helix)、カナリーキヅタ(別名:オカメキヅタ)(学名:Hedera canariensis)が、都市部の公園や街路樹の根元など、あるいは園芸に栽培されている。繁殖力が強いため、適切に維持管理をしないと越境し、在来の生態系に悪影響をおよぼす。

尖閣におけるキヅタの分布について、出典によって若干の違いがある。
 北海道~九州、朝鮮、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、沖縄島に分布し尖閣諸島には分布しない(参考文献4)
 屋久島、種子島、黒島~悪石島、宝島、喜界島、徳之島、沖永良部島、沖縄島、粟国島に分布。尖閣に分布(参考文献5)
 魚釣島に分布(参考文献2)

 魚釣島の周りの土地である、中国大陸・台湾・八重山・宮古島・久米島には、キヅタは分布していない。


コウシュンウマノスズクサ

和名:コウシュンウマノスズクサ
学名: Aristolochia zollingeriana Miq. (別名:Aristolochia tagala   Aristolochia tubiflora)
ウマノスズクサ科 ウマノスズクサ属
分布域:台湾、中国南部、フィリピン、マレーシア、インド。日本では宮古群島。尖閣諸島魚釣島にも分布するとの説がある。

 ウマノスズクサ属の代表的な植物はウマノスズクサだ。これは、葉が特徴のある馬の顔型をした、つる性植物で、本州以南~九州島、種子島、中国に分布し、河川敷などに普通にみられる。コウシュンウマノスズクサの葉は、ウマノスズクサとは異なり、特に特徴的な形をしていない。ウマノスズクサとコウシュンウマノスズクサは共にウマノスズクサ亜属の近縁種。なお、奄美以南の琉球には琉球列島固有種のリュウキュウウマノスズクサが分布するが、こちらはオオバウマノスズクサ亜属。また、リュウキュウウマノスズクサは宮古・八重山・尖閣諸島には分布しない。
 コウシュンウマノスズクサは宮古群島、台湾、中国南部、フィリピン、マレーシア、インドに分布する。宮古諸島では、点々と広く分布するが、個体数は限られる。
 参考文献1では魚釣島に分布すると書かれている。
 
 下の写真は2022/6/4 国立博物館筑波実験植物園 多目的温室 で撮影したもの。解説板には魚釣島に分布すると記されている。 




クスノキ

 
和名:クスノキ
学名: Cinnamomum camphora
モクレン類・クスノキ目・クスノキ科・ニッケイ属
分布:本州~九州、琉球、台湾、中国南部、朝鮮、ベトナムなど広く分布。魚釣島に分布するとの文献記録がある。

 暖地の植物なので、本州の分布は人為的なものが野生化したとの説がある。奄美群島や沖縄島では普通にみられるが、八重山では稀。琉球の分布も、人為的なものとの説がある。
 尖閣諸島の魚釣島に分布するとの文献記録がある。

 クスノキからは防虫剤の樟脳が取れるので、かつては各地で植林されていた。


 クスノキは、各地の寺社に植えられ、巨木となっている。

 左写真は愛媛県大三島・大山祗神社にある、国指定天然記念物の大クスノキ。神社の説明によると樹齢2600年。(撮影 2016/5)



タブノキ・ホソバタブ

 
和名:タブノキ
学名: Machilus thunbergii クスノキ科 タブノキ属
分布:本州~九州、琉球、台湾、中国南部、朝鮮、フィリピンに広く分布
    琉球では奄美大島~沖縄島、八重山、大東などに分布。魚釣島に分布

 樹高30mにもなる大樹。国内では、クスノキ同様、神社などに植えられていることも多い。



 
和名:ホソバタブ
学名: Machilus japonicai クスノキ科 タブノキ属
分布:本州~九州、奄美群島、沖縄県 に分布
    沖縄県では 伊平屋島、伊是名島、沖縄島、久米島、石垣島、西表島、与那国島 に分布



 タブノキの葉は広い。ホソバタブの葉は、タブノキより狭い。

 タブノキは魚釣島に分布するが、ホソバタブは不明。


バリバリノキ

和名:バリバリノキ
学名: Litsea acuminata クスノキ科 ハマビワ属
分布:本州(千葉以南)~九州~トカラ、台湾
    琉球では奄美大島、徳之島、沖縄島、伊平屋島、久米島、石垣島、西表島、与那国島に分布。魚釣島に分布

 樹高10mを超える。
 名前は特徴的だが、そう珍しい樹木ではなく、かといって、ものすごくありふれているということもない。用材に使われる。

撮影場所 東京大学小石川植物園 (2022.6.22撮影)


 
和名:タブノキ
学名: Machilus thunbergii クスノキ科 タブノキ属
分布:本州~九州、琉球、台湾、中国南部、朝鮮、フィリピンに広く分布
    琉球では奄美大島~沖縄島、八重山、大東などに分布。魚釣島に分布

 樹高30mにもなる大樹。国内では、クスノキ同様、神社などに植えられていることも多い。



 
和名:ホソバタブ
学名: Machilus japonicai クスノキ科 タブノキ属
分布:本州~九州、奄美群島、沖縄県 に分布
    沖縄県では 伊平屋島、伊是名島、沖縄島、久米島、石垣島、西表島、与那国島 に分布



 タブノキとバリバリノキは共にクスノキ科であり、樹形や葉の形が似ている。タブノキの葉は広い。ホソバタブの葉は、タブノキより狭いが、バリバリノキよりも広い。


 クスドイゲ

和名:クスドイゲ  ヤナギ科・クスドイゲ属(旧:イイギリ科)
学名:Xylosma japonica あるいは Xylosma congestum 
分布:本州(近畿以西)、四国、九州、朝鮮、台湾、中国、フィリピン、インドシナ
   琉球では伊平屋島、沖縄島、石垣島に分布。魚釣島に分布との文献記録がある(参考文献4)。

海岸沿いの山地に生える常緑樹。通常、樹高3m~5m程度だが、10m程度のものもある。とげが多い。
参考文献4では、石垣島には中国、インドシナに分布するコバノクスドイゲ(Xylosma senticosa)が分布とする。

参考文献5では、クスドイゲ・コバノクスドイゲの分布について、魚釣島に分布、石垣島には分布疑問、それ以外の大隅諸島~沖縄群島~宮古・八重山群島には分布しないとしている。

参考文献1には、クスドイゲの沖縄県での分布に関して以下の説明がある。伊平屋島、沖縄島、石垣島、魚釣島に分布。魚釣島と石垣島に関しては標本が存在するが、近年は確認されて おらず、現状は不明。他の島の現状は不明である。 コバノクスドイゲは記載なし。


センカクガジュマル

 「センカクガジュマル」の名称で売られているガジュマルがある。普通のガジュマルに比べて、葉が少し丸い。「マルバガジュマル」「コマルバガジュマル」「パンダガジュマル」「コパンダガジュマル」の名称で売られているガジュマルは、葉が丸いので、これらのどれかと同じものかもしれない。
 1971年、1973年、1979年の尖閣学術調査報告には「ガジュマル(学名:Ficus microcarpa)」は記載されているが、「センカクガジュマル」は記載されていない。

 センカクガジュマルをオンライン販売している人のページに、学名を Ficus retusa cv. Senkaku あるいは Ficus microcarpa 'Senkaku' などと書かれているものがある。これだと、Ficus retusa あるいは Ficus microcarpa の園芸品種の意味となる。


 左写真は佐多岬(鹿児島県)のガジュマル。普通のガジュマルです。




 左写真は普通のガジュマルの葉。
 (東京大学小石川植物園 温室 2022/5/17 撮影)




参考文献
1 沖縄県環境部/編 『改定・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版 菌類編・植物編』 2018年
2 石垣市/編 『尖閣諸島自然環境基礎調査事業報告書』 平成27年2月
3 横畑泰志、横田昌嗣、太田英利/著 『尖閣諸島魚釣島の生物相と野生化ヤギ問題』
4 国立科学博物館 琉球の植物データベース
5 大川智史、林将之/著『琉球の樹木』文一総合出版 (2016/11)

最終更新 2022.6

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