竹島問題参考書


久保井規夫/著『図説 竹島=独島問題の解決』柘植書房新社 (2014/6)




 竹島は韓国領であると主張している。
 本書の著者は、日本政府の要請を無視して、竹島に上陸した。竹島に上陸したジャーナリストは少なくないはずだが、学者で竹島に上陸した人は、本書の著者が初めてかもしれない。

 江戸時代の地図、特に、長久保赤水図の各版を詳細に検討する等、歴史的考察を主体に、竹島領有権を検討し、竹島は韓国領であるとしている。
 歴史的に見た場合、竹島が日本の領土でないとする資料はいくつかあり、朝鮮の領土とする資料もある。しかし、竹島が日本の領土であると考えられる資料や、朝鮮の領土でないと考えられる資料は無い。この事実をもってすれば、竹島が韓国の領土であることは間違いないことであり、著者は、そのような立場に立っている。しかし、江戸時代や、明治初期の歴史資料は、現在の国際法と完全に一致するものでないので、現在の領土の領有権主張に、どれだけ有効であるかと言うと、その点には議論があるだろう。

 ところで、本書では、江戸時代から明治初期の地図を詳細に検討して、竹島が朝鮮の領土であるとしているが、江戸時代の地図を元に、竹島日本領を主張する人もいる。竹島日本領論者は、ずさんな検討と思いこみで自らの主張を強弁するのではなく、本書程度に詳細な検討をしてほしいものだ。
 江戸時代、鬱陵島は朝鮮の領土であることが決まっていた(元禄・竹島一件、天保・竹島事件)。江戸時代から、明治初年の地図では、鬱陵島と竹島の帰属について、すべて同一に書かれているので、地図上では、鬱陵島が朝鮮で竹島が日本と解釈できるものは存在しない。このため、地図解釈で、竹島日本領を唱えることは、困難である。

 乙未事変に伴い、日本の弾圧を逃れるため、高宗がロシア公館に逃げ込む(俄館播遷)と、韓国政治に対するロシアの影響力が強まった。俄館播遷は1年で解決し、その後、西・ローゼン協定により、日露両国は韓国の完全独立を承認することになるが、その後も、韓国内政に対するロシアの影響力は無視し得ない状況にあった。そうした中、韓国は大韓帝国勅令41号で石島を欝島郡の管轄とした。当時、海底ケーブルが竹島付近を通っていることなど、日露両国の戦略にとって、竹島は重要な位置を占めていた。
 本書では、大韓帝国勅令41号に対して、ロシアの影響は無視できないとの視点である。


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