竹島


池内敏/著『竹島 ―もうひとつの日韓関係史 』(中公新書)(2016.1)

 竹島問題研究の第一人者・池内敏教授による一般向け解説書。著者は、竹島は日本固有の領土との日本政府の説明には批判的であり、かといって、韓国の主張に同調しているわけではない。近代以前に、竹島が日本の領土であったとか、韓国の領土であったとする、両国の主張をともに否定する。
 著者は、2012年に名古屋大学出版会より『竹島問題とは何か』を出版しているが、この本は内容詳細で参考文献も豊富に記されていた。本書は一般向け解説書であるので、あまり細かい話題には立ち入っていない。また、参考文献の記載も少ない。しかし、いい加減な記述ではなくて歴史学者としてのきちんとした記述なので、歴史を正しく理解したうえで竹島問題を理解しようとする人には読み応えのある本だ。
 竹島問題を扱った新書版の本では、下條正男氏の本があるが、下條氏は史料の恣意的解釈が多く、またしばしばその所説を変更するなど問題が多いことで知られる。(坂本悠一『社会システム研究』2014年9月参照)。池内氏による本書は、下條氏のような恣意的歴史解釈ではなくて、歴史学の手法に従った歴史解釈による竹島問題の解説なので、正しい理解を希望する人には有用な本である。
 本書では、16世紀以降の竹島の歴史・江戸幕府による放棄、古地図の検討、日露戦争期の領土編入、サンフランシスコ条約の解釈、固有の領土とは何か、と竹島問題を理解するために必要な内容に一通り触れられている。



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