日本海と竹島 日韓領土問題

 
大西俊輝/著 『日本海と竹島 日韓領土問題』 東洋出版 2003.1  
 
 竹島を日本領とも韓国領ともしていない立場での記述。本書の内容は、中世の竹島認識を中心とした竹島問題の解明で、多数の古文書解読に基づく解説により、中世の竹島認識を明らかにしている。

 序章に続く第1部は、西洋の鬱陵島・竹島の発見から島名の混乱を経て、日露戦争期に日本領としたことと、日本の敗戦後マッカーサーライン・李ラインが設定されたこと、日韓基本条約締結と、幕末以降の竹島の歴史を解説。
 第2部は、主に日本の文献もとに、中世日本の竹島認識および竹島をめぐる日本の態度の説明。
 第3部は主に日本の文献を元に、日本の竹島渡海事業から、鬱陵島・竹島における日韓の衝突およびその解決の説明。
 第4部は朝鮮の古文書などを参考にして、中世の朝鮮における竹島の認識を明らかにする。朝鮮では、鬱陵島のほかにも島があったことは了解事項だったが、それが、現在の竹島に常に一致しているかと言うとそうでもない。しかし、だからと言って竹島の認識がなかったかと言うとそういう訳でもない。
 終章は竹島問題に対する著者の考え方。この本が出版されたころ、日本では竹島は無主の地であったものを日本が先取したとの説明が有力だった。本書では、無主地であったことを否定して、竹島は日韓両属の境界地であったとする。

 現在、日本政府は、無主地先取論を取り下げて、中世から竹島は日本の固有の領土権が確立されていたと説明しているようである。韓国では、以前から、竹島は韓国の固有の領土権が確立されていたと説明している。本書に示された日本・朝鮮の古文書解説によれば、日本の主張・韓国の主張共に成り立つような牽強附会解釈が可能であるように思う。このため、本書を読んだ後「やはり竹島は日本固有の領土だ」 と思う人もあれば「やはり竹島は韓国固有の領土だ」と思う人もあるだろう。
 しかし、本書を冷静に読めば、竹島は日韓どちらかの固有の領土ではなく、また、無主地でもなかったことが分かるだろう。



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