朝鮮王妃殺害と日本人

 
金文子/著 『朝鮮王妃殺害と日本人 誰が仕組んで誰が実行したか』高文研(2009.2)
 
 日清戦争で勝利した日本は、軍事力を背景に、朝鮮への内政介入を強めてゆく。これに対抗して、朝鮮はロシアの影響力を利用して日本を排除しようとした。日本公使三浦梧楼らは、親ロシア派の中心と目した王妃(閔妃)殺害を計画し、日本軍守備隊、日本警察官、訓練隊(日本軍将校に指導された朝鮮軍隊)、日本人新聞記者、日本人壮士らを動員し、王妃殺害を実行した。
 
 本書は日本の公文書、事件に関係した日本人の証言禄や回顧録等を丹念に調べ上げ、事件の全貌を明らかにするもの。歴史研究書であって、歴史小説ではない。王妃殺害事件を知るための参考文献として、決定的に重要な本だ。
 
 序章から終章まで全9章からなる。それぞれの章には関連性は特にないので、興味あるところを読んでもよい。
 序章は閔妃の写真といわれていたものを取り上げ、これは、女官の写真であることを示している。
 第一章は王妃殺害事件に至る前段階として、日清戦争後、日本が朝鮮にどのようにかかわっていったかを明らかにしている。
 第二章は井上馨から三浦梧楼に公使が代わり、王妃殺害が準備されていったことを説明する。
 第三章では事件の第一報を打電した海軍少佐新納時亮の経歴を中心に、主に海軍の事件との係わり合いを記述しているが、新納時の細かい経歴など、事件とは余り関係ないことが詳しくて、煩雑な感じがした。
 第四章は殺害実行犯の主体となった陸軍中佐楠瀬幸彦を中心としている。楠瀬中心とした陸軍軍人が三浦公使とどのように連携して殺人を実行したか、および、日本に召還された後、無罪放免となった経緯を明らかにしている。本章は、楠瀬の経歴が記載されているが、事件と直接関係がないことにも詳しくこの部分は余分に感じる。
 第五章は一等領事内田定槌が事件後に外務大臣へ送った書簡など、内田が残した諸文書をもとに事件の全貌を明らかにしている。事件の概要は本章を読めば分かるが、ある程度、事前知識がないと理解しにくい。
 第六章は殺害にかかわった壮士の中心人物・安達謙蔵を取り上げている。安達の経歴が詳しい。この証の最後で、安達証言をもとに、大院君がグズグスしたので殺害実行が朝になったため、犯行が多くの人に反抗が目撃されたことが示されている。
 第七章のタイトルは「現場からの逃走」
 終章では殺害の狙いは電信線の確保だったと説明しているが、目的の一つに電信線の確保があったとしても、それだけではないだろう。



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