大西俊輝/著 『続 日本海と竹島 日韓領土問題の根本史料『隠州視聴合紀』を読む』 東洋出版 2007.10



 『隠州視聴合紀』の詳しい解説。

 『隠州視聴合紀』は江戸時代の1667年、隠岐郡代の齋藤豊仙が著した隠岐の地誌書で、第一巻の国代記に次の一節が有る。
 『此二島(鬱稜島と竹島のこと)無人之地、見高麗如自雲州望隠州、然則日本之乾地、以此州為限矣』
 最後の、『然則日本之乾地 以此州為限矣』は『しからば即ち、日本の戌亥の地、この州をもって限りとなす』なので、『日本の北西端はこの州です』という意味になる。 
 竹島領有論争が日韓で起こったとき、日本の外務官僚川上は、『州』を『島』の意味に解釈して、『日本の北西端は鬱稜島と竹島だ』と説明したが、『州』は『国』の意味なので、『日本の北西端は隠州だ』という意味であるとの反論があった。
 この部分の解釈は、竹島領有主張と密接に絡んでいるが、『州』を『島』と読むか『国』と読むかの論争は、『隠州視聴合紀』全体を読むこと無しに、一節のみの解釈論が繰り返された。
 このような状況に対して、大西は、『隠州視聴合紀』全体を精読し、その中で、『州』『嶋』『洲』がどのように使い分けられているかを見ることにより、 『日本の北西端は隠州です』の意味であると説明している。ただし、大西が、竹島は日本の領土に含まれないとの認識だったとの解釈に立っているわけではない。

 本の一節のみを切り出して、無理やり、自分に都合の良い解釈を作り上げるのではなく、まじめに、全体を理解して、その中で正しい解釈を目指すことは、学問としての文献調査の基本だ。大西の本は、不毛な領土争いを声高に叫ぶことではなくて、冷静に学問すべきであると教えている。



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