北方領土問題参考書



上坂冬子/著『これでは愛国心がもてない』




 本の題名からして、自分の主張を根拠もなく一方的に言っているだけのような気がしたが、事実関係が誤りで、その上に自分勝手な主張では話にならない。

 本の内容は、前半が2006年8月に起きた、日本漁船に対するロシア銃撃事件。後半は靖国問題である。ここでは、前半に限ってコメントする。

 日本漁船に対するロシア銃撃事件は、坂下登船長の漁船が日ロ中間線を越えて、日本の法律をも違反して操業したところ、ロシア国境警備艇の銃撃を受け、証拠隠滅を図っていた乗組員が死亡した事件である。坂下登船長とは、かつて、ソ連のスパイをしていたことが、国会でも取り上げられている、前科者である。
 今回の事件で、拿捕された坂下登は、ロシア側の主張を認めて、有罪判決を受け、その後、釈放された。ロシアの取調べでは、宣誓した上での証言であるので、もし、これが偽証であるならば、偽証罪が適用される。坂下登は釈放後、日本に帰国すると、マスコミの取材に対して、一転、違法操業は無かったとの発言をした。マスコミ取材でのインタビューは嘘を言っても法的責任を問われないものであるため、ロシアで行った宣誓した上での証言とは、法的重みは全く異なる。

 著者の上山冬子は、坂下登にインタビューを行い、マスコミの取材と同様な説明を得ている。上山冬子は坂下の説明の信憑性を全く考えることなく、坂下はすべて真実をありのままに発言しており、ロシアの公式説明はすべてが虚偽であるとの前提で、日本国民に愛国心を求めているのだろうか。

 本が出版されたのは、2007年1月20日であるが、本の出版後20日あまりたった、2月11日の北海道新聞の記事によると、根室海上保安庁は、坂下登を違法操業の疑いで書類送検する方針を固めたとのことである。日本の警備当局による調査においても、ロシアの公式説明が真実で、坂下がマスコミインタビューで語った内容は虚偽であることを認めた分けである。
 普通に考えたら、自首していない犯罪者が、捜査前に、マスコミインタビューで「私が犯罪をしました」と説明することなど、ありえないだろう。おまけに坂下はスパイの前科者である。どう考えても、マスコミインタビューで自分に不利になる真実を語ることなど考えられない。

 坂下が日本の法律に違反していたことが、日本の検察当局によって認定された現在、この本を読む価値は全くないだろう。


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