北方領土問題参考書



『北方領土は泣いている』斎藤勉・内藤泰朗/編著(産経新聞出版 2007.7)


この本を読むことを、あまり、お勧めしません。

 日本政府の北方領土要求は、1956年以来、4島一括返還論だった。この主張は、日本の要求が100%満たされない限り、絶対に認めないというもので、要するに、永遠に北方領土は1mmも返還されないものである。
 2005年12月、岩下明裕氏は三島返還論を主張した著書を出版した。さらに、麻生外務大臣は3島プラスα返還論を発表、日本国内においても、現実的解決を目指す主張が現れるようになった。

6月に産経新聞社から、北方領土関連本が発行された。

 今回出版された、産経新聞の本は、4島一括返還論以外は絶対だめであると主張し、最近の現実的解決を目指そうとする論調を攻撃している。論拠は、50年間使い古された日本に都合の良い一方的主張で、まったく新味は無い。しかも、類書に比べても、論証は緻密さを欠いている。
 日本政府外務省は、パンフレット『われらの北方領土』を発行し、希望者に無料配布しているが、産経新聞社の本には、外務省のパンフレットを適当につなぎ合わせて、あとは威勢のよいことを書いただけのような印象を受けた。
 もし、北方領土問題に関心があるのならば、外務省発行のパンフレットをもらって読んだほうが、まともな知識が得られるだろう。

 ところで、産経新聞の本には、不思議な記述がある。P120

 ちなみに、太平洋戦争の終戦日は、世界的には日本がポツダム宣言を受諾した8月14日、または昭和天皇の終戦の詔勅が放送された翌15日となっているが、ロシアでは、今でも、日本側が米戦艦ミズーリ上で降伏文書に調印した9月2日だと主張している。

 終戦記念の日は、日韓では8月15日、英国では8月14日であるが、米国では、公式には9月2日とする事が多いだろう。中・ロでは9月3日とされている。産経新聞社の本の記述は事実に反する。自分の主張をごり押しするために書いているような本なので、事実に反した記述があっても、特に驚くにはあたらないが、この部分は、話の内容と直接関係ないことである。なぜ、事実に反した記述になっているのか不思議である。
 なお、日本の高校生の多数が使用している、山川出版『詳説日本史』では、次のように、第2次大戦の終了は9月2日であると記されている。

 9月2日、東京湾内のアメリカ軍艦ミズーリ号上で日本政府および軍代表が降伏文書に署名して、4年にわたった太平洋戦争は終了した。

 産経新聞記者には、高校でまじめに日本史を学んだものは少ないのだろうか。


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