北方領土問題参考書
私残記 森荘已/著 中公文庫(1977年10月10日)
本の内容は、1807年、フォボストフのエトロフ島襲撃事件に遭遇、ロシア捕虜になり、警備不備の責任をとがめられた大村治五平の手記、およびその現代文・解説。
この本は、昭和18年に刊行されたものの復刻版であるが、序文とあとがきは新たに追記された。
大村治五平は、南部藩の火業師で、55歳のときにエトロフ島警備に派遣された。大村の記述の前半は、フォボストフのエトロフ島襲撃事件以前に、エトロフ島で起こった出来事が記されている。
襲撃事件では、ロシア側の一方的攻撃に対して、日本の警備陣は抵抗することなく逃げ出したが、大村は翌日ロシア人に見つかり、捕獲され、ロシア船に乗せられ、宗谷で解放された。大村の記述の後半は、襲撃事件と、ロシア船に載せられていたときの様子がかなり詳しく記されている。自己弁護になっている記述が散見されるが、この点は致し方ないだろう。
森荘已の解説は、大村の記述の解説というよりも、ロシアの北辺進出から、襲撃事件までの歴史の解説。書かれた時期がノモンハン事件直後であるため、日本に都合良く、ロシアに敵意を持っていると感じられる点もあるが、おおむね、客観的に歴史を解説している。ただし、古い記述であるため、今となっては、この解説を読む必要は感じられない。
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