北方領土問題参考書
『日本の領土問題 北方四島、竹島、尖閣諸島 (角川oneテーマ21)』
東郷和彦、保阪正康/著 角川書店(2012/2/10)
前半は、東郷・元条約局長の、北方領土、竹島、尖閣の領土問題解説。後半は、東郷氏と作家の保坂氏の対談で、おおむね、保阪氏が質問し、東郷氏が答える内容になっている。
北方領土問題解説では、日ソ・日露の交渉の経緯が詳しい。ただし、東郷氏の著書「北方領土交渉秘録」の概要を説明したような内容なので、同書をすでに読んでいる人には特に目新しいことはないように感じる。交渉経緯のおさらいには良いだろう。東郷氏は日本側の交渉担当者なので、解説は、基本的には、日本側の見方になっている。
竹島の解説は、池内氏の説を引用に負うところが大きい。竹島問題では、韓国側の解説では「竹島韓国領論」を主張するものが多いが、日本では「竹島日本領論」から、どちらにも批判的なものまでさまざまである。池内氏の論は、日本に都合の良いことだけを言いふらすものではないが、基本的には、日本に好意的な論であるため、本書においてもそのようになっている。
尖閣問題については、いくつかの本を参考に概要を手際よくまとめているが、詳しくはない。歴史的経緯については、井上清氏の本や、浦野起央氏の本の引用によるところが多い。
後半は、領土問題に対してどのように対処すべきなのかとの観点で、東郷氏の考えが随所に見られる。しかし、対談形式であるため、いまひとつはっきりしないし、論を精密にまとめたものでもない。
総じて言えば、日本の領土問題である「北方領土」「竹島」「尖閣」について、何が問題で、なぜ解決しないのか、どのようにすればよいのか、そういうことを考える上で参考になるだろう。