北方領土問題参考書
日本地図史 金田章裕・上杉和央/著
北方領土が地図に現れた最初のものは、現存するものでは、1643年のド・フリース図である。日本でも、翌年の正保御国絵図に描かれている。どちらも、不完全なものであるが、日本では、あたかも、日本が太古の昔から北方領土を支配していた証拠であるかのように宣伝される。
地図に描かれているからと言って、日本が実効支配していたと短絡的に判断することは出来ない。日本の地図はどのように作られてきたか、特に、国絵図はどのような変遷をしているのかを知ることは、領土問題理解のうえでも必要なことである。
本書は、古代地図から、中世地図、江戸幕府の国絵図、東西交流による世界図、近世地図にわたり、日本地図史の全体像を説明している。
北方領土問題で有名な、正保御国絵図について、本書では以下の説明がある。
『松前については、原図ないし控図などは確認されていないが、正保国絵図をもとにして作られた日本図にその形が記されている。そこには一見、どこであるかまったく見当のつかない島が描かれている。日本の他の地域の「かたち」がそれなりに整っていることもあり、北方に対する知識がきわめて乏しかった状況を明瞭に知ることができる。(P92)』
初歩的な地図史の知識さえあれば、正保御国絵図をもって「日本が北方領土を実効支配していた証拠」などと考えることはないだろう。