北海道・東北史研究会/編『メナシの世界 根室シンポジウム「北からの日本史」』
北海道出版企画センター(1996/5)
1992年、根室で開催された北海道・東北史研究会の講演研究報告をまとめたもの。ちょっと古いので、入手は難しいかもしれないが、県立図書館クラスの大きな公立図書館ならば置いてあることも多い。
内容は次の6章からなる。
北構保男/著『オホーツク文化研究の過去・現在・未来抄』
秋月俊幸/著『日本北辺地図にみる東西の接触』
豊原煕司/著『チャシとその機能』
児玉恭子/著『「えぞが住む」地の東漸 メナシとは何か』
川上淳/著『一八世紀~一九世紀初頭の千島アイヌと千島交易ルート』
井上研一郎/著『《夷酋列像》と現代』
『オホーツク文化研究の過去・現在・未来抄』はオホーツク文化研究史であるが、オホーツク文化をよく知らない人のために、この文化の概要も記載されている。
『日本北辺地図にみる東西の接触』は「奇妙なフランスの日本北辺地図」をとりあげ、それが、ラペルーズ図と松前藩の加藤肩吾の地図をあわせたものであることを示した後、この地図がブロートンやクルー全シュテルンの探検に影響を与えたことを示している。
『チャシとその機能』はチャシの目的に対する総合的な解説。チャシには祭礼・談判から防塁まで、ものによって異なる機能が与えられているとしている。北海道各地に存在するチャシを見学するとき、チャシを理解する上で参考になる。
『一八世紀~一九世紀初頭の千島アイヌと千島交易ルート』は1700年代後期から1800年代前期におけるアイヌを介した日本とロシアの交易や、日本が鎖国政策のためアイヌの交易を規制してゆく状況が説明されている。
本書の掲載されている6つの内容はそれぞれ異なったテーマであるので、興味のあるところを読めばよい。同じようなテーマに対して、最近では、幾つかの本が出版されているものもあるので、必ずしも本書を読む必要はないかもしれないが、いずれにしても、道東の歴史を知る上で有益な本である。