内なるシベリア抑留体験

 
多田茂治/著『内なるシベリア抑留体験』 社会思想社(1994/5)
 
 戦犯としてシベリア抑留(受刑)した3人の日本人「菅李治」「鹿野武一」「石原吉郎」に関するノンフィクション。シベリア抑留の一端と、帰国後の日本社会に受け入れられなかった帰国者の状況を垣間見ることができる。
 
 3人の抑留地での様子と帰国後の経緯が詳しい。特に、石原吉郎は帰国後、詩人として活躍したので、彼の帰国後の心情に立ち入った記述が本の後半を占める。
 菅李治はシベリア抑留中通訳として働いていたが、このとき、日本共産党委員長・徳田球一の要請を翻訳したことで、帰国後、国会で証言することとなった。この追及は、GHQのレッドパージと連動し、共産党を悪者に仕立て上げることが目的だったため、徳田球一に対して執拗に追及が行われたが、百戦錬磨の徳田は追及をすべて交わした。そこで、追及の矛先が菅李治に向けられた。この追及が原因で、菅李治は自殺した。
 鹿野武一は帰国後1年ほどたって、心臓麻痺で急死している。