北方領土問題参考書
北海道新聞社/編『消えた「四島返還」 安倍政権 日ロ交渉2800日を追う』北海道新聞社 (2021/9)
1956年の日ソ共同宣言以来、日本は北方4島の返還を求めてきた。日本はサンフランシスコ条約締結の時、クナシリ・エトロフを放棄したと説明していたのだが、その説明を変えたものだった。しかし、日本のこのような説明変更をソ連が容認することもなく、領土交渉は膠着した。
安倍晋三は内閣総理大臣になると、日ロ領土問題を解決しようとした。これまでの4島返還を唱えていたのでは解決の見込みはないので、安倍は二島返還に大きく軌道修正した。1956年の日ソ共同宣言では、平和条約締結後に、歯舞・色丹を引き渡すとなっいるので、2島返還で合意できると安易に考えたのだろうか。日ソ共同宣言では歯舞色丹の引き渡しが定められている。しかし、具体的に「何を」「どのように」「どのような条件の下で」引き渡すのかめられておらず、これらは交渉によることは当然であるが、日本はそれについて何の準備もなかったのだから、合意できなくて当然のことだった。
結局、安倍・プーチンの間で国境画定はできずに、日本が四島返還要求を断念した事実だけが残った。
本書は、安倍政権による日ロ領土交渉。本書によると、2018年11月8日のシンガポール会談で安倍政権は二島返還に転換し、1956年の日ソ共同宣言を基に国境画定交渉をすることが合意された。本書の記述は、一応時間を追っているようだが、新聞記者の執筆にしては、なんだか読みにくい。
最終更新 2022.2