参考書

中江秀雄/著『大砲からみた幕末・明治 近代化と鋳造技術』 法政大学出版局 (2016/9)

  ペリー来航で大砲の威力を思い知った幕府や各藩は大砲の鋳造に走る。しかし、砂鉄を原料としたタタラ製鉄で鋼を作っていた日本の伝統製鉄では粘りのある銑鉄を作ることはできず、まともな大砲は作れなかった。唯一の例外は埼玉県川口市の鋳物師が甑を使用して鋳鉄製の大砲製造に成功した。現在、この場所には復元した大砲が置かれている。場所は、川口郵便局の南側に少し入った工場内。
  
 本書では、幕末以降の日本の製鉄の歴史のほか、製鉄技術の解説が詳しい。また、各章ごとに参考文献が詳しい。ただし、著者は一般向けの図書執筆には慣れていないようで、文章が若干読みにくい。
  
 ところで、幕末に下田に来航したロシア・ディアナ号の大砲が靖国神社と横須賀三笠公園に展示されている。この点に関して、以下の記述がある。
 「靖国神社の大砲にはイギリス王室のヴィクトリア女王の紋章が鋳出しで明確に読み取れ、イギリス製の艦船蟠龍丸の備砲ではないかと、推察されている。横須賀の三笠記念館の大砲には紋章がなく、ディアナ号の大砲であるとの明確な証拠はつかめていないが、筆者はこちらがディアナ号の大砲と考えている。」(P38)


最終更新 2022.2


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