日ソ史参考書

田中雄一/著『ノモンハン責任なき戦い』 講談社新書 (2019/8)

 
 2018年8月15日に放送されたNHKスペシャルの新書本。
 同じような内容の番組として、1998年8月に放映された『ドキュメント・ノモンハン事件〜六〇年目の真実』があり、こちらは『ノモンハン隠された戦争』として書籍化されている。
 http://cccpcamera.asablo.jp/blog/2011/09/23/6110910
 
 本書は『ノモンハン隠された戦争』と比べ、作戦将校・辻政信に関する記述が詳しい。辻政信は国際政治の視野を全く欠いて、局地戦闘の勝利しか頭になくて、補給体制を含めた全体を見る目が全くなかったにもかかわらず、辻政信を中心とする関東軍の暴走を中央が押しとどめることもなく、敗戦に至った。辻政信は太平洋戦争では南方戦線の作戦立案にあたったが、補給を考える能力もないまま、局地戦の勝利にこだわり、兵力を分散させ、敗北に至ったのは、ノモンハンの失敗の繰り返しだった。
 
 辻政信は作戦課員として、太平洋戦争開戦にもかかわっている。太平洋戦争を開戦するか否かの会議で、勝利の見込みを尋ねられた辻は、「戦争というものは、勝ち目があるからやる、ないからやめるというばかりではない。・・・勝敗を度外視してで開戦に踏み切らなくてはならぬ。いや、勝利を信じて開戦を決断するのだ。(P198)」と主張して、日本を敗戦に引きずり込んでいる。
 辻政信こそ、日本陸軍の無責任で腐りきった象徴のような人だから、本書の記述が辻に多くのページを割くのは当然なのかもしれないが、そういう無責任な陸軍を放置していた、天皇・裕仁をトップとする政治の責任も重要なはずだ。

最終更新 2022.2


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