日ソ史参考書

NHKスペシャル取材班/著『NHKスペシャル 戦争の真実シリーズ2 樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇』KADOKAWA (2019/10)

 
  本書は、2017/8/14に放送された45分程度の番組「NHKスペシャル 樺太地上戦」の書籍版。番組はDVDで販売されている。
 この本は写真や図が多く、字が大きく行間も大きいので文章による情報量は少ない。

 8月15日の玉音放送があったのちも、ソ連や中国戦線では戦争が終結しなかった。樺太で、戦争が終結したのは8月22日である。
 本書は、8月15日以降、戦争が終結しなかった理由として、住民に竹やりなどで抵抗させて、時間稼ぎを図ったことを上げている。8月16日にソ連軍が恵須取に上陸してきたとき、ソ連軍は攻撃の意思を持っていなかったのに、現地日本軍に配属されたにわか日本軍人たちは、攻撃命令のもと、無抵抗のソ連兵を射撃した。これにより、ソ連軍の攻撃が開始された。(P38〜P42)
 P51には大本営が「即時戦闘行為を中止すべし」と命令したのに対して、第5方面軍は「樺太を死守せよ」と正反対の命令を出したとしている。この記述は正しいのだろうか。大本営が8月16日に出した命令(大陸命1382号)では「但し停戦交渉成立に至る間敵の来攻に方りては止むを得さる自衛の為の戦闘行動は之を妨けす」とあるので、積極的な攻撃をするなというだけのことであり、第5方面軍の命令と趣旨に違いはない。なお、大本営が戦闘停止命令を出したのは8月22日の大陸命第1388号で、8月25日零時以降に戦闘を停止せよとのことだった。
 日本軍とソ連軍の間では停戦交渉が何度か行われている。しかし、第88師団参謀長・鈴木康の手記によると、8月20日のソ連との交渉で、無条件降伏・武装解除を勧告されたがこれを拒絶して交渉が決裂した(P96〜P98)。日本が受諾したポツダム宣言には日本軍の無条件降伏が定められているにもかかわらず、これを拒絶している状況が明らかにされていて興味が持てる。
 このような状況が一転したのは、8月21日に満州の関東軍から戦闘停止命令があり、このため、22日午前に交渉した結果、停戦が成立し、樺太での戦争は終結した。(P122,P123)

最終更新 2022.2


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