日ソ現代史参考書

『NHKスペシャル 樺太地上戦 終戦後7日間の悲劇』(2018/7)NHKエンタープライズ

 
 2017年8月にNHKスペシャルで放映された番組のDVD。番組で見るのと比べて、興味ある所を何度も繰り返し再生できるので、DVDの方が理解しやすくて便利だ。内容は、終戦末期の樺太における日ソ戦の話。
 1945年8月15日にラジオで天皇の放送がされ、日本がポツダム宣言を受諾することが国民に知らされた。樺太における戦争は、この後に起こったものなので、かつては「ソ連がポツダム宣言を一方的に無視して攻撃した」などと言われることがあったが、近年では、日本軍が戦闘を止めなかったことが、樺太戦の一因であることが知られている。
 本DVDでは、樺太戦の端緒について、8月16日に恵須取に上陸したソ連軍に戦う意志がないことを見ると、日本軍は先制攻撃を仕掛けたと説明している。
 さらに、この経緯が以下のように解明されている。
 8月16日、日本軍司令部は「自衛の為の戦闘行動以外は即時戦闘行動を停止」と指示したが、これを受けた第五方面軍は樺太師団に対して「樺太を死守せよ」と命令した。恵須取では電波の具合が悪く現地兵は玉音放送を聞くことができなかったが、日本軍上層部は終戦を知らせなかった。このような経緯で、日本軍が先制攻撃を仕掛けたものだった。
 本DVDには、このほか真岡についても詳しい説明がなされている。真岡郵便電信局では電話交換手12名のうち9名が自殺し、3名が郵便職員により救出された。この事件に対して、DVDでは「9名全員が自決」との表現を使っているが、12名中9名が自殺したものを「9名全員」とは普通は言わないだろう。誤解を与える表現だ。実は、生還した3人のうちの一人は早期に病死し、一人は見習交換手だったため特に何も言われなかったが、残りの一人は、「なぜ自決しなかった」などと非難を受けたことがあったそうだ。


最終更新 2022.2


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