尖閣問題参考書
本田善彦/著 『台湾と尖閣ナショナリズム 中華民族主義の実像』 岩波書店 (2016/4)
江戸時代、尖閣は中国大陸と琉球との航路の目印として使用されていた。この時代に台湾に住んでいた人々は尖閣とは関係は持っていなかった。明治になって、日本政府が琉球を内国化すると、中国はこれに抗議して、日中間で琉球の領有権は未解決問題となった。しかし、日清戦争で日本が勝利して、台湾の割譲を受けると、琉球・尖閣・台湾は日本の領土であることが決定した。
尖閣周辺海域は好漁場であるがいずれの地域からも遠いので、製氷設備なしには、生魚を運搬することはできなかった。最初に尖閣を開拓した日本人は、最初に海鳥の捕獲をし、次に鰹節製造を行った。この事業には、琉球人、台湾人が従事している。
台湾に製氷設備ができると、台湾漁船が尖閣周辺海域に出漁するようになる。この時期には、琉球(特に八重山)漁民の中には、台湾船にやとわれて漁業に従事する者もいたようだ。
日本の敗戦により、台湾が日本から離れ、琉球が米国占領下になると、台湾漁民はこれまで通り尖閣周辺海域で漁業や、上陸して海鳥の卵の採集などを行っていた。
沖縄が日本に返還されると、尖閣の施政権が日本に引き渡されたことにより、台湾漁民の出漁ができなくなった。
本書は、沖縄返還後に台湾で起こった『保釣運動』について、『1970-1980年代 北米』『1970-1990年代 台湾』『1970-2010年代 香港 中国大陸 華人社会』と、三地域の関係者にインタビューを行い、保釣運動の源流から実情までを取材している。インタビュー内容が多いので、ちょっと読みにくい。
台湾は親日であるとか、反日であるとか、決めつけるのではなくて、事実を理解するために、本書は有益だろう。