『密漁の海で 正史に残らない北方領土』 本田良一/著 凱風社(2004.6)
 1965年に起こった北島丸事件から取り上げている。レポ船(日本の情報をソ連に渡して、違法操業を見逃してもらう船)・特攻船(協力エンジンを積んだ高速船で警備を逃れる違法操業船)の実態が詳しく、内容の2/3を占める。残りの1/3は、ゴルバチョフ以降の日ソ・日露領土交渉にさかれていて、鈴木宗男問題等も詳しく説明されている。しかし、この部分は、北方領土周辺海域の漁業とは関係なく、前半の2/3と後半の1/3の関連性が乏しい。ゴルバチョフ時代以降の北方海域の漁業実態にもう少し触れて欲しかった。
本田良一/著 『〈新訂増補版〉密漁の海で』 凱風社 (2011/3/20)
 2004年に発行された、同名の本の改訂新版。最後の章が追加になっている。北方領土海域の漁業問題に関心があるならば、旧版を読んでいる人も多いだろうが、もし、まだ読んでいないのならば、ぜひ とも一読してもらいたい。 ・・・More・・・
『日ロ現場史 北方領土―終わらない戦後』 本田良一/著 北海道新聞社(2013/12)
 本の前半は、北方領土周辺海域での漁業の話。戦後、この地域の漁業を時代を追って説明していて、分かりやすい。日 本漁民の密猟と、加担している水産庁・北海道の関係が描かれている。密漁には、暴力団も深く関与しているが、この話 は多くない。内容的には、2004年に出版された「密漁の海で−正史に残らない北方領土』と重複する点も多いが、北方領 土問題と、地元の関与を考える上で、読む価値はあるだろう。
 本の後半は、終戦末期の占領以降の返還交渉の歴史。時間を追って、かなり詳しく書かれている。外交交渉は秘密のものが多いので、関係者の怪しげな情報や憶測が事実のように伝わっていることもあり、本書に書かれていることも、必ずしも真実であるとは思えないが、返還交渉の歴史を知る上で便利。
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鈴木智彦/著『サカナとヤクザ』小学館(2018.10)
 著者は、ヤクザ関係の記事が多いフリージャーナリスト。
 大規模密漁とそこに関与しているヤクザのルポ。6章に分けて、全国の密漁を記述。密漁の話が多く、ヤクザの話はあまり多くない。
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濱田武士、 佐々木貴文/著『漁業と国境』みすず書房 (2020/1)
 日本の国境問題と漁業の関連を手際よくまとめている。 ・・・More・・・ 
『新聞が見落としている レポ船の裏側』 山本峯章/著 日新報道出版部(1982.4.5)
 北方領土周辺海域で操業するレポ船(日本の情報をソ連に渡して、違法操業を見逃してもらう船)を取材しているが、取材は不十分である。又、本の後半は北方領土問題の歴史を記述している。この記述も、日本政府の北方領土論の焼き直しに過ぎず、総じて内容の乏しい本である。出版当時はそれなりに意義のある内容だったのかもしれない。
『されど、海 存亡のオホーツク』  土本典昭 1995.7 影書房
 1990年代になるとこれまで日本人の入域が厳しく規制されていた北方領土に、日本人ジャーナリスト・旅行者が立ちれるようになる。このため、1990年代前半には北方領土取材報告が多数出版された。これらの本では、北方領土の現実の姿の一端を知ることができる。ただし、取材は、日本への報道を目的としたものであるため、日本人に好まれるような取材が多い。これらの本は基本的には取材報告であるが、北方領土の歴史の解説も、まじめなものが多い。 
 本書は、映画監督・土本典昭による、日ロ合作映画の作成を目的とした、北方領土や沿海州地域の取材記。  ・・・More・・・
『オホーツク諜報船』西木正明/著 (1980.7) 角川書店
 本書は、レポ船を題材とした小説。それなりに取材がなされていて、ある程度レポ船の実態を反映しているようにも思えるが、何が真実で、何が作り話なのかよくわからない。   ・・・More・・・
『北方四島』 朝日新聞北方領土取材班 朝日新聞社(1991.10)
『北方四島・千島列島紀行』 NHK取材班 NHK出版(1993.6)
『北方四島紀行』 井出孫六・石川洋文 桐原書店(1993.3)
『素顔のサハリン千島』 金丸知好/著 連合出版(1993.6)
『北方四島ガイドブック』 ピースボート北方四島取材班 第三書房(1993.7)
『たったひとりでクリルの島へ(ホームステイでサハリン、北方領土を行く)』 浅井淳子/著 山と渓谷社(1992.9)
『エトロフの青いトマト(素顔の北方領土、エトロフ・クナシリ紀行)』 菅原有悠、石井英二 山と渓谷社(1992.6)

 1990年代になるとこれまで日本人の入域が厳しく規制されていた北方領土に、日本人ジャーナリスト・旅行者が立ちれるようになる。このため、1990年代前半には北方領土取材報告が多数出版された。これらの本では、北方領土の現実の姿の一端を知ることができる。ただし、取材は、日本への報道を目的としたものであるため、日本人に好まれるような取材が多い。ピースボート北方四島取材班の著書は日本政府の方針とは異なった立場で書かれている。
 これらの本は基本的には取材報告であるが、北方領土の歴史の解説も、まじめなものが多い。
 
『千島縦断』 北海道新聞社/編 北海道新聞社(1994.8.20) 
 1990年代に北方領土取材報告が多数出版されたが、この本もその一つ。ただし、北方領土にとどまらず、ウルップ島から占守島までの北千島の取材報告も含まれている。写真も多い。北方領土問題などの政治的な問題はない。千島はこの取材が行われて以降、急激に変化したので、現在の状況とは異なる。
『コースチャから北方領土へ ひらかれるソビエト極東と北海道』 NHK札幌放送局・日ソプロジェクト/編 NHK北海道ビジョン(1991.3.20)
 コースチャとは、やけどを負ったサハリンの少年の名前。彼を札幌の病院で手当をした時の話を初めとして、サハリン・北方領土のいろいろな話題が書かれている。コースチャの話は40ページあまりと詳しいが、それ以外は10ページ足らずと少ない。このため、いろいろな話題が書かれているが、夫々は若干、突っ込み不測の感じがする。
『禁じられた島へ 国後・色丹のたび』 岸本葉子/著 凱風社(1992.4.30)
 戦後、サハリン残留日本人の息子で、色丹島在住のビクトル・ヨシオビッチ・シュストフとの会見を中心に、何人かの、北方領土在住日本人2世を取り上げている。色丹島残留日本人フジイ・ユキオの息子との会見の話もある。
『北方四島貸します 色丹島50年賃貸事件の真相 現地ルポ』 吉岡達也/編著(1992.10)
 1992年に、香港の会社を経営する中国系日本人が、色丹島の土地賃貸契約を結んだ。このとき、背後にKGBが動いているなどと、根拠のないデマをマスコミに吹聴する右翼学者も存在した。本書は、綿密な取材に基づいたルポルタージュ。 
名越健郎/著『北方領土の謎』 (2016/11)海竜社
 本書は、北方領土の現状についての解説。近年では、北方領土の映像を見る機会は多いけれど、映像だけではわからない状況もあるので、本書を読むことは無駄ではない。     ・・・More・・・   
『国境の植民地・樺太』 三木理史/著 塙書房(2006.5.15)
 樺太の歴史、樺太に日露が進出した歴史と、現在の樺太の状況が説明されている。あまり知られていないことも多く書かれており、この分野に関心のある人には役に立つ書籍である。ただし、歴史の話と現在の話が明瞭に分離されて記述していないので、若干読みにくい。
西牟田靖/著 『ニッポンの国境』 光文社新書  2011/7  ・・・More・・・ 
 西牟田靖/著『誰も国境を知らない 揺れ動いた「日本のかたち」をたどる旅 』 朝日文庫 2012年
 著者は北方領土・竹島・尖閣諸島を取材したことがあるノンフィクション作家。北方領土取材では、ロシアのビザを取った上で、サハリン経由で渡航している。また竹島取材は、韓国・鬱稜島経由の入域。いずれの場合も、日本政府の指導を無視した形での入域である。北方領土への渡航は、返還運動関係者に対して、ビザなし渡航が認められているが、ノンフィクション作家である西牟田に対して、日本政府はビザなし渡航を認めなかったため、ロシアのビザを取った上での渡航をした。尖閣の取材は、上陸することが許可されなかったため、飛行機を使っての上空からの取材だった。  ・・・More・・・   
『わが夕張 わがエトロフ』 佐々木譲/著 北海道新聞社(2008.9.5)
 著者のエッセイ。題名は『わが夕張 わがエトロフ』となっているが、夕張・北方領土のエッセイは全体の1/4程度。このほかに、北海道中標津の話や、バルト三国の話がある。北方領土のエッセイは、ビザなし交流で、エトロフ・シコタンを訪れたときの話。
『知られざる日露国境を歩く』 相原秀起/著ユーラシアブックレット(2015/2)
 かつて、日ロの国境だった樺太の北緯50度線には、国境を示す標石が4個置かれていた。本の前半では、この標石が現在どのようになっているか、あるいは、当時置かれていた場所はどうなっているのかを取材した結果を記載している。  ・・・More・・・
『千島列島の植物』 高橋英樹/著北海道大学出版会 (2015/3)
  千島列島の植物を外来種にいたるまで網羅。植物を科ごとに分類し、学名・分布状況などが詳述されている。千島列島の植物を知る上で、最も重要な文献だろう。本書は、学術書であって一般向け啓蒙書ではないので、植物の絵図はなく、本書を理解するためには、ある程度の予備知識が必要。本書のメインは千島列島の植物を網羅することであるが、千島列島の植生の解説も詳しい。   ・・・More・・・
『北千島の自然誌』 寺沢孝毅/著 丸善出版(1995/6)
 北千島の旅行記。「どのように訪れたのか」「動物を中心とした自然がどのようであるのか」このようなことが記述の中心。
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阿部幹雄/著 『北千島冒険紀行』 山と溪谷社 (1992/8)
 ソビエト崩壊直前の1990年に、北千島アライド島、ポロムシル島のスキー登山記録。   ・・・More・・・ 
相原秀起/著『ロシア極東 秘境を歩く』 (2016/11)北海道大学出版会
 内容は「占守島」「サハリン」「シベリア」の3つに分けられ、すべて著者の取材記。 現状を取材したのではなくて、各地に残る日本人の足跡をたどっている。   ・・・More・・・ 
中村逸郎/著 『シベリア最深紀行―知られざる大地への七つの旅』岩波書店 (2016/2)  
 ロシア政治が専門の中村逸郎教授によろシベリア案内。
 シベリアに住む人々を取材したものだが、シベリアの一般像を描いているのではなくて、世捨て人のようなかなり変わった人を対象としている。
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井澗裕・他/著・編 『稚内・北航路 サハリンへのゲートウェイ』北海道大学出版会 (2016/7)  
稚内はサハリンとの国境であり、2005年までは定期航路があった。本書は、国境を接する稚内とコルサコフのの問題を扱う。実際には、稚内とコルサコフの歴史観光案内といった趣の本。最近、社会科の先生を引率とした地方の歴史観光散策が盛んだが、本書はこの稚内・樺太版。  
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